【兵庫県知事選】SNSで加速する人権侵害と民主主義の危機
Japan In-depth / 2024年11月20日 18時16分
安積明子(政治ジャーナリスト)
「安積明子の永田町通信」
【まとめ】
・11月18日、兵庫県議会文書問題調査特別委員会(百条委員会)で、同文書問題を鋭く追及していた竹内英明前県議の辞職が発表。
・県知事選の争点、「斎藤知事の政治的責任を問う」はずが、「元西播磨県民局長を断罪する」ことにすげ替えられていった。
・元西播磨県民局長の名誉は大きく傷つけられてしまった。
兵庫県知事選の投開票が行われた翌11月18日、兵庫県議会文書問題調査特別委員会(百条委員会)が開かれた。そこで突然に発表されたのが、これまで同文書問題を鋭く追及していた竹内英明前県議の辞職だ。
「今回の選挙を通じて、言葉の暴力、ネットの暴力。これが拡散してですね。本人だけではなく、まず家族が本当になってしまってですね。その中で本人はまず、家族を守るのを優先するということです」。
竹内氏が所属した「ひょうご県民連合」の上野英一県議は、竹内氏とその家族が凄まじいネットリンチに遭っていることを説明した。
すでに筆者は別ルートで、竹内氏の家族に対するバッシングがあまりにも酷く、竹内氏が県知事選候補の稲村和美氏を応援するどころか、外出すらままならないことを知らされていた。
そして騒動は竹内氏の議員辞職に止まらなかった。これが果たして民主主義国家での出来事かと疑うほど、今回の兵庫県知事選は荒れまくり、逮捕者も続出した。
兵庫県議会は9月19日、7月に自死した元西播磨県民局長が作成した告発文書問題をめぐって、斎藤元彦知事の不信任を全会一致で可決した。その決議文には「県政に深刻な停滞と混乱をもたらした政治的責任は免れない」と書かれていた。そして斎藤知事は失職を選び、11月17日に兵庫県知事選が行われた。よって選挙の争点は「斎藤知事の政治的責任を問う」のはずだったが、いつの間にか「元西播磨県民局長を断罪する」にすげ替えられていく――。
きっかけはNHK党の立花孝志党首の登場だ。立花氏は10月24日、自分を含めて複数人が兵庫県知事選に出馬することを表明(最終的には立花氏のみが出馬)。斎藤知事のパワハラ問題について独自調査をした結果、「違法行為と認められる事実は見つかっていない」として、「自分の当選を目指すのではなく、斎藤氏を応援したい」と言明した。
兵庫県入りした立花氏に、まずは「片山安孝前副知事の代理」と称する県議が接触し、「手紙」を渡した。それには、「自死した元局長が公用パソコン内に“不倫日記”を保存していた」などと記されていた。さらに「10月25日に開催された百条員会での音声記録」も渡された。その内容は昨年行われた阪神タイガースとオリックスバッファローズの優勝パレードの協賛金キックバック問題について、片山氏が百条委員会で尋問に答えたものの一部だった。なお24日と25日の百条委員会は、県知事選の影響を考慮して秘密会とされていた。
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