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MR不足が招く医療現場の危機、高齢医師との連携で解決策を

Japan In-depth / 2024年11月26日 23時0分

レンボレキサント(商品名デエビゴ)は、もっと使いやすい。脳の覚醒を促進するオレキシン受容体を阻害し、生理的な機序に従って、脳を睡眠状態に誘導する。脳活動を全般的に抑制するベンゾジアゼピン系と比べ、副作用は軽い。





高齢の患者に対しては、ベンゾジアゼピンは控え、新しい睡眠薬へ切り替えるべきだろう。ところが、実態は違う。知人の病院事務長は、「新薬に切り替えることなく、デパスを現在も処方し続けている医師は珍しくない」という。特に「定年後に非常勤で外来だけをしている年配の医師に多い」そうだ。





デパス(エチゾラム)はベンゾジアゼピン系睡眠薬で、1990年代に人気があった薬だ。ところが、依存性、離脱症状、高齢者での転倒や認知機能低下が問題視され、2016年に抗精神薬に指定された。その後、処方は激減している。





この事務長は、「先日、デパスを内服している高齢者が転倒し、大腿骨骨折で入院しました」という。この患者で、骨折とデパスの因果関係が証明されている訳ではないが、デパスを服用していなければ、転倒せず、骨折していなかった可能性は否定できない。このような「医療事故」とも言える事件は、国内で多数、起こっているだろう。





ベテラン医師が、若い頃に覚えた薬を漫然と処方し続けることは前述した。従来、医師に対して、薬の情報をアップデイトさせる役割を担っていたのがMRだ。もし、エーザイのMRが、従来通り、処方医を訪問していたら、この「悲劇」は回避できていたかもしれない。





勿論、医師の勉強が足りなかったことは否定しない。ただ、規範論を盾に、医師の責任を問うても、問題は解決しないだろう。臨床医学の範囲はあまりにも広く、さらに日進月歩だからだ。全ての新薬を「自習」するなど不可能だ。従来、不適切な側面もあったが、MRは医師が必要な新薬の情報を提供してきた。医師と製薬企業の利益相反が問題視され、このような関係が途絶えようとしている。





今後、この傾向は益々、強まるだろう。それは、製薬企業が生き残りのため、人員整理を進めているからだ。今年は住友ファーマ、田辺三菱製薬、協和キリン、武田薬品工業が早期退職を募集した。





人員削減の中心はMRだ。その数は、ピークの2013年(6万5,752人)から減り続け、23年には4万6,719人となった。代わって、製薬企業が力を入れたのが、ウェブによる情報提供だ。コロナ禍以降加速し、2023年度には、40社がオンラインMR制度を導入し、その数は507人(前年比23%増)だ。





この流れに乗ったのがエムスリーだ。2000年9月に創業し、製薬企業を顧客に、医師に対してオンライン上で情報を提供するサービスを代行している。24年度の売上は2,388億8,300億円で、11月15日現在の時価総額は8,488億円だ。





エムスリーの登場がMRの在り方を変えたが、このやり方には問題がある。高齢医師が置き去りになることだ。彼らは、ウェブからではなく、MRから情報を提供される体制で育ってきた。そのやり方は急には変えられない。MRを介した情報提供がなくなれば、前出のような医療事故は避けられないだろう。医師と製薬企業の利益相反を開示すると共に、MRの役割を、医療安全の視点から見直すべき時期がきている。





トップ写真:男性医師と医療情報担当者MRの会話の様子(イメージ)※本文と関係ありません 出典:RRice1981 by getty images




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