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日本の装甲車事業は日本製鋼所と防衛省が潰す

Japan In-depth / 2025年1月9日 19時0分

しかもAMVが選定されたときに、国内のライセンス生産事業者は決まっていなかった。防衛装備庁と陸上幕僚監部はAMVの国内生産を担当する企業が決まっていないまま、国内生産のコストも維持整備体制も万全だとAMVを採用した。あまりに杜撰である。本来ならば国内生産企業が決まっていない段階で、AMVを選定から外すべきだった。





パトリア社の代理店であるNTKインターナショナル社は小規模な専門商社であり、装甲車両関連の実績もない。年に数百億円となるAMV調達を担当するのも無理があった。このためAMV採用が決まってから防衛大手の住商エアロシステムが関わり、日本製鋼所が製造を担当することが決まった。





しかも陸幕の認識は能天気だ。実に国産率98パーセントが可能だとしている。だがAMVに搭載されるスカニア社のエンジンやトランスミッション、タイア、油圧関連などのコンポーネントは輸入でこれらの国産化を実現できる数字ではない。





日本製鋼所はAMVのライセンス生産にあたってコマツの元装甲車事業の関係者と、ベンダー企業を利用する。事実上コマツのゾンビが復活することになる。最大手の三菱重工も内情は苦しい。かつて15年ほど前まで装甲車両を製造する三菱重工相模原工場では120名ほどのスペシャリストがいたが、今やその数は三分の一程度に減少し、新人が補充のため配属されることもない。日本製鋼所に参入によって思い切った設備や人員に対する投資も難しくなった。





財務省がラインセンス生産に反対したのはこのような防衛省のずさんな体制に対する不信感も背景にあった。このため2024年度予算で財務省はライセンス生産のため初度費158億円を認めたが、財務省はこの金額を輸入に使うならば執行を許可するというスタンスであった。防衛省と財務省のハイレベルの交渉が続いいた。





だが昨年に中に財務省が折れて、AMVのラインセンス生産が決定された。筆者が取材する限り、その背景には日本製鋼所に天下りした陸自OBの将官が、福岡県選出の閣僚経験者の議員(その後落選)に泣きついて、財務省に圧力をかけたからだ。





AMVのラインセンス生産が中止になっていれば、それが象徴となって防衛産業の再編にはずみがついたはずだ。だが今後もどの分野でも再編が行われず、低レートの生産が続くことになる。防衛省は防衛産業の利益率を8パーセントから海外並みの13パーセントに引き上げるが、他国のメーカーは国内外の市場で激しく戦って性能やコストに磨きを欠けているし、自社開発のリスクも負っている。何のリスクも負わずに、努力もせずに利益が上がるならば経営者は何の努力もしないだろう。





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