日本の装甲車事業は日本製鋼所と防衛省が潰す
Japan In-depth / 2025年1月9日 19時0分
筆者が昨年パリで行われた軍事見本市、ユーロサトリであった日本製鋼所の技術関係者は国内装甲車メーカーの競合は必要だというが、そもそも3社が分け合う規模の国内市場は存在しない。その理屈でいえば日本製鋼所が火砲の生産を独占していることはおかしい、三菱重工など他社が参入すべき、ということなる。
そして装甲車の市場規模は縮小することが予想される。岸田内閣は現在の5年間の防衛力整備計画で43兆円の予算の支出を決定し、選挙では防衛費をGDP比2パーセントに増大することを公約にした。だがそれは実現しないだろう。なぜか新聞は無視するが、石破政権は先の参議院選挙で防衛費をGDP比2パーセントに増大することを公約に盛り込まなかった。岸田政権の公約を継承するならばこれを下げる必要はなかったはずだ。恐らくは現在の5ヵ年計画が終了したあとは、防衛費は良くて横ばい、あるいは下がる可能性がある。
我が国の財政赤字はGDPの2.6倍で世界最大規模である。しかも少子高齢化で社会保障費は年に3兆円ずつ膨張している。現在の国家予算で税収は70兆円ほどに過ぎず、35兆円程は国債発行で賄っているので財政赤字は増える一方だ。防衛費も含めて財源の裏付けがない支出の拡大を続ければ、円の信用を毀損して為替は大きく円安に触れるだろう。
たとえば1ドルが200円、あるいは300円になればエネルギーや食料、消費財を多く輸入にたよる我が国は極度のインフレと個人消費の縮小が起こってスタグフレーションになることが予想される。しかも人口は減少していくのでGDPの規模事態が縮小し、財政赤字の返済は年々厳しくなる。とても防衛費をGDP比2パーセントに拡大する余裕はない。
更に少子高齢化の面からも自衛隊も縮小せざるを得ない。現在の26万人体制の維持は不可能だ。いくら予算を増やしても護衛艦や装甲車に乗る隊員の確保ができない。現在ですら募集をかけても半分しか隊員を確保できない。しかもサイバーや宇宙領域、無人アセットなどで隊員が必要だ。
既存の部隊を縮小せざるをえない。ことに空海に比べて優先順位の低い陸自はなおさらだ。現在陸自の定員は約15万人、実数が134,000名だが、これは恐らくは10万人以下に削減する必要があるだろう。今ですら北海道の部隊など充足率4割代の部隊がゴロゴロしている。普通科(歩兵)や特科(砲兵)などの兵科も大幅な削減が不可避だろう。当然ながら必要な装甲車両の数も減らざるを得ない。防衛省が3社もメーカーを食わせて行くのは困難だ。
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