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日本の装甲車事業は日本製鋼所と防衛省が潰す

Japan In-depth / 2025年1月9日 19時0分

問題なのは防衛省に防衛産業新興のための見識と、開発のための知見と能力が悲しいほどの欠如していることだ。まず「悪者」になりたくないので事業の統廃合を言い出せない。木原稔前防衛大臣は会見で筆者の質問に答えて、防衛省は事業統廃合に関与しないと明言した。これは当事者責任の放棄である。輸出しないため、唯一のユーザーである防衛省が統廃合に関与しないというは無責任だ。





また、防衛装備庁や陸上自衛隊に装甲車両の運用や開発を指導する「軍事の専門家」としての見地が悲しいほどに欠落している。AMVはフランスのVBCI、ドイツのボクサー、スイスのピラーニャなどと並ぶ世界最高レベルの8輪装甲車だ。だがその最新鋭の装甲車に陸幕は音声無線機しか搭載しない。他国では途上国でもネットワーク化を行いデータのやり取りを行えるようにしている。最新鋭のラップトップを買っておいて、Wordしかインストールせず、モデムを搭載せずネットにアクセスできないようなものだ。現代の装甲車の価格の3割以上は電子装備やネットワーク関連だが、陸自と装備庁は昭和のままなのだ。





もう一つの新型装甲車プログラムである現用の軽装甲機動車の後継である「小型装甲車」も大概ずさんだ。実は「小型装甲車」では三菱重工のハウケイ(タレス・オーストラリア)と日立の推すイーグル(モワーグ)の二車種が選定されてトライアルが行われたが、両方とも採用されなかった。その事実も理由も防衛省は公表していない。もしイーグルが採用されて最もシェアが低い日立が生産するならば同社はかなりのシェアを得ただろう。それは三菱重工や日本製鋼所のシェアを食うとことになる。候補二種が不採用になったのでその心配は当面はなくなった。





だが問題は陸幕の「小型装甲車」の運用が軽装甲機動車同様に浮世離れしていることだ。軽装甲機動車は事実上陸自の主力装甲車だが、4人乗りの小型装甲車で1個分に2両が必要だ。普通はAMVのような1個分隊が登場できる大型の装甲車を使う。しかも無線も火器も搭載しておらず、下車戦闘時は運転手も下車して戦う。このため一旦下車したら装甲車から火力支援も、機動力による支援も期待できないし、下手をすると敵に装甲車を乗っ取られる。このような胡乱な運用をしているのは世界広しといども陸自だけだ。AMVですら音声無線機しか搭載していなので、「小型装甲車」は軽装甲機動車同様に無線を搭載しないか、せいぜい音声無線機を搭載するだけだ。とても苛烈な現在の戦場で生き残ることはできない。





このように防衛省、陸幕とも防衛産業の育成のビジョンも、まともに装甲車運用、開発する能力がない。そのような状態で装甲車事業に日本製鋼所が参入するならば装甲車事業は自滅への道を進むだけだ。やがて装甲車の調達は輸入に頼るほかなくなるだろう。





トップ写真:NATO多国籍戦闘グループの軍事演習でパトリアAMVに乗るスロベニアの兵士(2023年2月16日スロバキア・レスト)出典:Sean Gallup/Getty Images




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