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IMFが財政モニター発表、米国の拡張的な財政政策に伴うリスクなど指摘(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月22日 0時30分

IMFは4月17日、最新の「財政モニター(Fiscal Monitor)」を発表した。副題に「選挙イヤーにおける財政政策」と銘打った同報告書は、米国財政についても多く言及している。

報告書では、2053年までに米国と中国の債務残高が約2倍になると予測し、「両国が財政政策をどのように管理するかは、世界経済に大きな影響を及ぼすとともに、他国の基本的財政予測に重大なリスクをもたらす可能性がある」と指摘する。特に米国関連で大きく取り上げているのが、資金調達コストの上昇と歳出圧力の増大だ。

まず、資金調達コストの増大に関しては、米国の10年債利回りの上昇を基に分析を行い、連邦政府の拡張的な財政政策によるインフレ率の上昇と、国債増発に伴うタームプレミアム(注)の増大の2点をコスト増加要因として指摘している。1つ目のインフレ率の上昇については、財政政策により2023年のコアインフレ率は約0.5%ポイント押し上げられたとしている。財政政策の効果もあってインフレ率やインフレ期待が高止まりし、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め政策が継続した結果、国債利回りが押し上げられたという指摘だ。2つ目の国債増発に関しては、財務省がFRBによる量的引き締めと同時に国債の増発を計画したことが、債券市場のボラティリティーを高め、タームプレミアムの上昇につながったと分析している。IMFによると、基礎的財政赤字が1%ポイント増加すると、タームプレミアムが11ベーシスポイント上昇するという。こうした米国財政の悪化による米国債利回りの大幅な上昇の影響は米国内にとどまらず、新興国や発展途上国の国債利回りの急上昇や為替レートの乱高下につながりかねないと警鐘を鳴らしている。

次に、歳出圧力の高まりに関しては、2024年は米国を含む多くの国で選挙年となることから、取りやめることが困難な社会保障関連の支出をはじめ、新型コロナウイルス禍で拡張した財政政策などの引き締めが十分に行われない可能性があると述べている。こうした歳出圧力の増大は高齢化や気候変動といった課題への対処や、産業政策への投資などにより、中期的に続くと指摘する。報告書では、いずれの国でも資金ニーズは新型コロナ禍前の水準を上回るものの、特に米国と中国における資金ニーズは2030年までの平均でGDPの25%超と、そのほかの先進国(20%程度)や中国を除く新興国(10%程度)と比べて高い水準になると試算している。こうしたニーズが現実のものとなれば、資金調達環境は世界的に悪化していくことになりそうだ。

こうした認識の下、報告書では、新型コロナ禍での危機対応措置、燃料やエネルギーの補助金の縮小、年金・医療といった社会保障関連の受給権見直しなどを通じた歳出削減、多国籍企業の課税逃れ(BEPS :Base Erosion and Profit Shifting)への対処などを通じた歳入増といった取り組みにより、財政健全化を図っていく必要があると説いている。いずれも、米国大統領選で議論になり得るテーマで、今後こうしたテーマがどのように扱われていくのか、その動向が注目される。

(注)償還期間が長く、価格変動などのリスクにさらされる可能性が高い長期債には、一般的に短期債よりも高い金利が付与される。

(加藤翔一)

(米国)

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