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米共和党調査委員会が2025年度予算案の対案を提示(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月25日 16時15分

米国共和党調査委員会は3月20日、2025年度予算について独自の対案を発表した。同委員会は、下院共和党の保守派議員団として1995年以来、毎年のように独自の予算草案を策定している。

今回発表された予算草案では、歳出総額は5兆8,780億ドルとバイデン政権が示した2025年度予算教書での6兆9,520億ドルよりも1兆740億ドル少ない。歳出内訳は裁量的経費が1兆6,400億ドル(予算教書は1兆9,290億ドル)、義務的経費は3兆3,240億ドル(予算教書は4兆3,720億ドル)となっており、義務的経費の削減幅が大きいようだ。義務的経費をさらに詳細にみると、社会保障関係費が1兆4,490億ドル(予算教書は1兆5,430億ドル)、メディケアが9,090億ドル(予算教書は9,360億ドル)、メディケイドなどが3,280億ドル(予算教書は5,890億ドル)、その他義務的経費が6,380億ドル(予算教書は1兆3,030億ドル)となっている。失業保険プログラムやメディケイドなど低所得者向けプログラムの対象者を積極的に労働市場に戻すことや、オバマケアの見直しなどを通じてこれらに要する費用を削減していくという主張だ。

一方、歳入総額は4兆9,820億ドルとこちらも予算教書と比較して5,030億ドル少ないが、歳出と比較するとその差は小さい。歳入面では、特に次の取り組みが挙げられている。企業向け減税を通じて投資や雇用が増加し、給与税収入などが増加するという想定だ。

(1)成長を促進する税制改革

2024年2月に下院が可決した米国家族および労働者に対する税軽減法(2024年2月2日記事参照)に基づいて、耐用年数20年以下の固定資産に対する100%ボーナス減価償却や研究開発控除などを促進する。これらの減税による経済成長により、5,660億ドルの追加税収が得られるとしている。

(2)トランプ減税の恒久化

2025年で期限を迎えるトランプ税制下での所得税減税や中小企業向け減税を恒久化する。

(3)経済成長への投資に対する完全かつ即時の償却

2023年から段階的に償却率が逓減している設備投資に対する即時償却(2018年1月31日付地域・分析レポート参照)を恒久化する。これにより、給与税収入が275億ドル増収となるとしている。また、研究開発投資に対しても、設備投資と同様に即時償却できる制度を創設し、これにより給与税収が63億ドル増加するとしている。

(4)減価償却の前倒しなど

減価償却の算定スケジュール(非住宅39年、住宅27.5年)を20年に短縮するとともに、インフレなどの状況を踏まえて減価償却に係る控除額を毎年調整できるようにする(中立コスト回収システム)。これらを通じた経済成長により、給与税収入896億ドルを含む1,862億ドルの追加税収が得られるとしている。また、製造業が海外から米国内に製造施設を移転する場合、その売却益については課税を免除する。

(5)キャピタルゲイン税の軽減

すべての米国民が追加課税なしで一定額まで投資できる口座(ユニバーサル・セービング・アカウント)の創設、キャピタルゲインに係る無税枠の大幅拡大、課税対象をインフレを加味した資産の実質増加分のみに適用するよう変更、などの措置によってキャピタルゲイン課税を軽減する。

(6)遺産税の廃止

農場など一定以上の資産を相続する際に適用される遺産税を廃止する。これにより、雇用が創出され給与税収入が86億ドル増加するとしている。

これらを合わせた2025年度の財政赤字は8,960億ドルとなり、予算教書(1兆7,810億ドル)と比較すると約8,850億ドル少なく、かつ7年間で財政収支を均衡させる想定となっている。もっとも、(1)前提となる経済成長率が、同期間中、予算教書よりも高めに見積もられていることや、(2)歳入の伸びが第1次トランプ政権時と比較しても顕著に高い想定となっていることなど、やや実現可能性に疑問が持たれる部分もあり、その点には留意が必要だ。

なお、バイデン政権は、本予算草案に対して「この極端な予算の下では、メディケア、社会保障、オバマケアが削減されることになる。国家的な中絶禁止を支持している。家庭の住居費や処方薬などのコストが増加する。そして、富裕層や大企業に恩恵をばらまいている」と批判する声明を発表している。

(加藤翔一)

(米国)

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