米ボーイングのCEOが年内に退任、航空機事故が影響との見立て(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月2日 1時10分
米国航空機大手ボーイングのデービッド・カルフーン最高経営責任者(CEO)は3月25日、2024年末で退任すると発表した。ラリー・ケルナー取締役会会長も、年次株主総会での再選に立候補しない意向を取締役会に伝えた。同社の取締役会はスティーブ・モレンコフ氏を後任として選出した。モレンコフ氏はこの役割で、同社の次のCEOを選出する取締役会をリードすることになる。さらに、民間航空機部門社長兼CEOのスタン・ディール氏も退任し、ステファニー・ポープ氏が後任となる。
この経営陣の刷新は、同社で最も売れた航空機の機種「737マックス」の安全問題が原因と複数のメディアは伝えている。アラスカ航空が保有する同機が1月5日のフライトで離陸して間もなく機内の側壁が吹き飛んだ件で、連邦航空局(FAA)は同機に一時的な運航停止を指示している。
米国内で同機を保有しているのは、ユナイテッド航空が最多の79機、次にアラスカ航空の65機、続いてコパ航空の29機となっている。
この事件後の各航空会社の対応は次のとおり(ロイター3月25日)。
アラスカ航空:所有する65機は全て運航停止とし、数百の運航がキャンセルとなった。1月8日には技術者が該当エリアでのネジの緩みを指摘した。その後の調査の後、FAAから運航許可が出たため、65機中57機は2月5日から運航再開した。
ユナイテッド航空:所有する79機全てが運航停止となり、1月8日に同社も幾つかのパネルのネジを締める必要があると述べた。同様の経過を経て2月5日に79機中の78機で運航再開の許可が出た。なお、同社は2024年に同機を100機納入予定。
コパ航空:パナマの航空会社の同社は1月9日時点で、調査のために21機が運航停止中と述べた。
行政側の対応は次のとおり。
FAA:1月11日から調査を開始し、2月5日にほとんどの機体が運航を再開した。しかし、「受け入れがたい」安全問題のため、同機の生産拡大を禁止した。同社の安全管理プロセスを見直すためにバイデン政権が任命した専門家委員会は、安全性に対する文化が同社の経営陣と従業員の間で断絶しているとの見解を示した。
国家運輸安全委員会(NTSB):大統領直属のNTSBは、国際機械工・航空宇宙労働組合(IAM)に調査を委託した。2月6日に発表された報告書によると、同機の吹き飛んだパネルには4つのボルトがなかったことが判明。ドアプラグのパネルはボーイングの下請け会社だったスピリットエアロシステムズが製造し、2023年8月31日にワシントン州レントンの組立工場に到着したという。
なお、日本航空(JAL)は2023年3月に同型機21機の購入契約を締結、ANAホールディングス(ANA)は2022年7月に20機の購入契約を締結済みで、本機の生産拡大禁止の影響を受けるとみられる。
(松井美樹)
(米国)
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