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バイデン米政権、鉱山での労働権侵害の疑いでメキシコ政府に確認要請、日系企業も資本参加(米国、メキシコ、日本)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月5日 13時35分

米国通商代表部(USTR)は4月3日、日系企業が資本参加するメキシコ中部メヒコ州のティサパ鉱山で労働権侵害の疑いがあったとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請したと発表した。

RRMは、事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、違反が認められれば、USMCAによる特恵措置の停止といった罰則が適用される。RRMの手続きは、USMCA加盟国政府が独自に発動できるが、労働組合などの第三者機関が加盟国政府に労働権侵害を提訴することも可能だ。USTRは今回、メキシコ全国鉱夫・冶金(やきん)・鉄鋼労働組合(SNTMMSSRM)から申し立てを受けたとしている。同日の米国労働省の発表によると、ティサパ鉱山の権益の過半数を所有するメキシコのインダストリアス・ペニョレスがSNTMMSSRMとの団体交渉を拒んだほか、同組合員を解雇、またボーナス支給に際して他の組合員を優遇するなどして、組合活動に干渉した疑いがあるとの理由に基づく。

事実確認の要請を受けたメキシコ政府はUSMCAに基づき、調査を行うか否かを10日以内に返答しなければならず、調査を行う場合には45日以内に完了する必要がある。また、今回のUSTRによる確認要請をもって、米国は対象施設からの製品輸入について、両国間で労働権侵害の解消に合意するまで、最終的な税関での精算を留保できる。実際、キャサリン・タイUSTR代表は財務長官に対し、当該鉱山からの製品輸入にこの措置を適用するよう指示した。

当該鉱山は、日本の支援も受けて開発が行われてきた。インダストリアス・ペニョレスが過半数の51%の権益、日本のDOWAメタルマインが39%、住友商事が10%の権益を所有する。亜鉛を中心に鉛や銅などのベースメタルを生産し、製品は日本にも輸出されている。

バイデン政権は「労働者中心の通商政策」を掲げ、貿易相手国企業に米国企業と同等のコンプライアンス基準を求め、その競争条件を平準化することで労働者の権利を保護し、いわゆる「底辺への競争」の防止や、米国の雇用・経済的利益の確保を図っている(2024年3月5日記事参照)。この観点から、米国からメキシコに対するRRMの利用は、特に2023年以降に発動件数が増加、対象分野が拡大しており、今回で2024年に入ってからは4件目、USMCA発効以降では22件目となる。これまでのRRMに基づく措置については、USTRまたは労働省のウェブサイトを参照。

(葛西泰介)

(米国、メキシコ、日本)

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