ACE、ASEANの洋上風力の可能性についてセミナー開催(ASEAN、ベトナム、フィリピン、インドネシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月2日 13時0分
ASEANエネルギーセンター(ACE、注1)は3月28日、「ASEAN Offshore Wind and Launching of ASEAN Offshore Wind Development Roadmap」と題し、ASEANの洋上風力発電の可能性に関するオンラインセミナーを開催した。
ASEANは、地域全体として2025年までに発電容量の35%、一次エネルギー供給量(TPES)の23%を再生可能エネルギーとする目標を掲げている(注2)。同セミナーでは、ACEの分析官がこの目標を踏まえつつ、主要国の洋上風力発電の現状や今後の可能性について説明した。
同セミナーによると、2022年時点のASEANの風力発電容量は、ベトナムの3.5ギガワット(GW)、タイの1.6GW、フィリピンの0.6GWの順に多い。しかし、各国の気象条件(風速)や地理(海岸線の長さ、周辺の水深)、関連政策の有無などに鑑みると、洋上風力では、特にベトナム、フィリピン、インドネシアのポテンシャルが高いという。
ベトナムでは、2030年に向けて、陸上と洋上風力の開発を段階的に進め、風力発電の主要電源化を目指すという方針を掲げている(注3)。同国の洋上風力による潜在的な発電容量は599GWにも達する見込みだ。開発有望地域としては、北部のトンキン湾周辺と南東部の海域がある。これら地域ではそれぞれ、風速7.5~8.5メートル(m)、9.5mの強力な風が吹いており、風力発電に適している(注4)。
フィリピンでは、2023年6月時点で63件の洋上風力開発案件を政府が認可している。主にルソン島北部、首都マニラ西部、ミンドロ島やパナイ島周辺が有望地域だ。国全体の洋上風力の潜在的な発電容量は178GWに達すると見込まれる。
インドネシア政府は、2025年までに255メガワット(MW)を風力から発電する方針だ(発電容量ベース)。ただ、技術的には国全体で277GWを洋上風力から発電するポテンシャルがあるとされる。適度な風力(風速7m以上)を有する開発有望地域は、同国東部のパプア州、南スラウェシ州の州都マカッサル周辺とされる。
各国の共通課題としては、洋上風力発電設備(着床式、浮体式)の設置が周辺海域の海底ケーブル、航路、漁業区域と重なる場合、関連業界との調整が必要となることだ。また、開発に際しては、自然環境への配慮も必須となる。
同セミナーでは最後に、今後のASEANにおける洋上風力発電を進めるため、明確な国のビジョンや目標の設定、関連インフラの整備、サプライヤーや地域企業との連携、開発資金の確保、関連規制や基準の策定が必要になると説明した。
(注1)ASEAN傘下にある国際機関。ASEAN各国のエネルギー管轄省庁やASEAN事務局と連携し、地域全体の持続可能なエネルギー戦略策定に向け、調査や情報提供、政策提言などを行う。
(注2)ASEAN経済共同体(AEC)のエネルギー協力枠組みとして、「ASEANエネルギー協力行動計画(APAEC)、フェーズ2(2021~2025)」が進行中。同枠組みの下で、ASEAN域内での再エネ利用拡大目標が設定されている。
(注3)「第8次国家電力開発基本計画(PDP8、2021~2030)」で目標記載。洋上風力の発電容量は2030年までに6GW(全電源の4%)にする方針。
(注4)海抜100メートル付近の風速。
(田口裕介)
(ASEAN、ベトナム、フィリピン、インドネシア)
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