1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

EU、再エネ技術の域内生産を支援するネットゼロ産業法案で合意、原子力も支援対象に(EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年2月14日 1時30分

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は2月6日、温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロ実現に貢献する技術(ネットゼロ技術)のEU域内での生産能力拡大を支援するネットゼロ産業法案に関して、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース)。法案は、ネットゼロ技術の域内製造目標を設定し、製造拠点設置の許認可プロセスを簡略化する規制緩和策などを導入する。世界的に競争が激化する、ネットゼロ産業の域内競争力強化と安全保障の観点から域内生産の底上げを図る。

同法案は、「グリーンディール産業計画」(2023年12月15日付地域・分析レポート参照)の一環として、欧州委員会が2023年3月に提案した(2023年3月20日記事参照)。欧州議会は11月に(2023年11月24日記事参照)、EU理事会は12月に(2023年12月11日記事参照)修正案となる「立場」を採択していた。今後、両機関による正式採択を経て、施行される見込み。合意された法文案は現時点で公開されていない。

政治合意内容は、欧州委案から修正が加わった。対象技術について、欧州委案はネットゼロ技術を指定した上で、特に優先度の高い「戦略的ネットゼロ技術」を別途指定していたが、政治合意では区分を廃止しネットゼロ技術に1本化する欧州議会の立場が採用された。原子力に関しては、欧州委は限定的な支援にとどめる方針で(2023年3月27日記事参照)、加盟国間で対立していた(2023年7月20日記事参照)が、最終的に再生可能エネルギー(再エネ)と同等の支援の対象とすることで合意した。

ベンチマーク(努力目標)については、2030年までにEUが必要とするネットゼロ技術の年間整備量の40%を域内生産することで合意。欧州議会が主張した、ネットゼロ技術の世界市場を基準にしたベンチマークも導入され、2030年までに世界シェア15%(価値ベース)の獲得を目指す。

許認可プロセス短縮化については、欧州委案の審査期限や、「戦略的ネットゼロ事業」の審査をさらに迅速化させる方針が維持された。ネットゼロ産業集積地の形成を目指そうと欧州議会が提案した「ネットゼロ産業バレー」も導入することで合意。バレーに指定された地域では、行政手続きのさらなる簡略化が可能となる。

中国などの台頭を念頭に、保護主義的な要件が盛り込まれた公共調達については、詳細が明らかにされていないものの、中国排除の方針を明確にした欧州議会案ほど厳格でない要件で合意したとみられる。加盟国は、公共調達を実施する際に価格以外の評価基準として持続可能性と強靭(きょうじん)性への貢献を考慮することが求められる。環境面での持続可能性への貢献は義務的な最低要件となる。一方で、強靭性への貢献に関する要件は、特定のネットゼロ技術の供給が1つの域外国からの輸入に50%以上依存している場合にのみ適用される。ただし、適用にあたっては、欧州委による各技術の特定域外国への依存度の評価が必要となる。再エネ整備のための競争入札においても、加盟国は、持続可能性や強靭性への貢献など価格以外の選定基準を、1年間に実施する競争入札のうち少なくとも30%あるいは6ギガワット分に対して適用しなければならない。

なお、域内の石油・ガス生産事業者に対して生産量に応じて課すとした二酸化炭素の回収・貯留の目標については、欧州委案のとおり、2030年までに年間5,000万トンの注入能力の整備を目指すことで合意した。

(吉沼啓介)

(EU)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください