2019年卒の就活解禁、今年の新卒採用状況はどうなる?売手市場・短期決戦へ
JIJICO / 2018年3月21日 7時30分
2019年卒の就活解禁、今年の新卒採用状況はどうなる?売手市場・短期決戦へ
2019年卒の就活解禁。今年も売り手市場で学生有利な状況
2019年卒の大学生を対象にした就職活動が本格化しています。3月1日に経団連に加盟する企業の会社説明会などが解禁され、就活支援サイトが主催する合同企業説明会も相次いで開催されています。
ここ数年は売手市場で、学生に有利な状況が続いています。アベノミクスや東京オリンピックの影響で、企業の業績が堅調に推移していることに加え、リーマンショック後の採用控えや団塊世代の定年退職もあり、多くの企業で人手不足の状況が続いています。
こうした売り手市場の傾向が強まっているため、多くの企業が2019年卒の学生を早期に囲い込みたいものと推察されます。すでに解禁前から動き出している企業もあり、個別企業の説明会は3月から4月に集中しています。
2018年卒までの就活の振り返り。インターンシップの活用が盛んに
2017年卒の大学生から、就職活動のスケジュールに大きな変更がありました。経団連に加盟している企業を中心に、選考(面接など)の開始時期が2ヶ月前倒しとなり、現在の6月からになっています。
ところが、売手市場が続いているため、企業によっては人材確保のためにやむを得ないとして、それ以前から選考を開始しているところもあります。結果として、選考開始時期が以前よりも全体的に前倒しになっている状況です。
選考の開始時期は前倒しになった一方で、会社説明会の解禁は3月1日のまま据え置かれました。これは学生にしてみると、自己理解・企業分析、応募書類対策、筆記試験対策など、選考前の準備に費やすことができる時間が大幅に短くなったことを意味します。
このため、ここ数年でインターンシップを活用しようとする動きが急増しています。就職支援サイト大手・マイナビ社によると、2019年卒の学生のうち、インターンシップ参加経験者は7割を超えていることがわかっています。
2019年卒の学生から1日型のインターンシップが解禁されたことも、普及が加速した理由と見られます。学生には「考えていたのと違う」というミスマッチを防ぐメリットが、企業には優秀な学生と早期にコンタクトが取れるメリットがあります。
学生有利の今年の動向は短期決戦の模様
就活解禁から選考までの期間が短い中で、学生は興味のない業種・企業の説明会には参加しない傾向が強いと見られます。
今年の新卒採用の動向は、早く囲い込みたい企業と早く内定を決めたい学生の短期決戦となりそうです。
売手市場により学生は会社を選べますが、企業にとって人材獲得が難しい状況は変わらないものと見られます。
企業にとっては、求める人材像を再確認して、学生に関心を持ってもらえる工夫はもちろん、必要に応じて処遇の見直しや職場環境の改善を行い、求める人材の獲得につながる採用方法を確立することが課題となります。
学生が志望する人気業界に変化も。人気トップだった銀行の魅力が低下?
もう一つ、今年の動向として注目されるのは、学生が志望する人気業界に大きな変化が見られることです。
就職情報会社・ディスコ社による志望業界ランキングでは、昨年までトップだった銀行が4位に転落しました。
これは、フィンテック(金融とITの融合)の普及などを理由に、将来的に金融業界が人員削減を進めるとの見方が浸透したからです。すぐに人手が要らなくなることはなかったとしても、学生にとって安定した就職先としての金融業界の魅力が下がっていることの表れと見られます。
人気業界の変化は、銀行以外の業界の採用活動にも影響を与えそうです。他業界にとっては、これまでであれば銀行を志望していた優秀な学生を取り込むチャンスと見られています。
銀行を始め、生保や損保、証券などの金融業界においては、この動きに不安を感じる向きもあります。ただ、これで金融業界に優秀な学生が集まらないということではありません。
見方を変えれば、大量採用のイメージから「とりあえず受けておく」学生が多数いた分、本当に金融機関で働きたい意欲のある学生やフィンテック関連の新事業に携わりたいチャレンジ精神のある学生を採用できる転換期とも言えるでしょう。
「早く決めること」だけにとらわれない採用・就職活動が重要
今年の新卒採用の動向は短期決戦とはいえ、企業にしても働いてくれるなら誰でもいい訳ではありません。学生にとっても、望む職場に出会いイキイキと活躍できることが大切です。
近年、人気の就職先の一つに公務員があります。選考の開始時期は前倒しになりましたが、公務員試験の日程は変わっていませんので、公務員と企業の併願を検討する学生の頭を悩ませています。やはり狭き門ですので、筆記試験はもちろん、惜しくも面接で落ちてしまったという学生が、民間企業へ切り替えて活動するタイミングがあります。
具体的には、公務員の二次面接のピークである8月・9月以降が、次に優秀な学生が大きく動くタイミングになります。
短期決戦で求める人材を獲得できなかった企業は、一定期間、根気強く採用活動に取り組むことが必要になります。そういった意味では、今年の短期決戦は長期戦の様相を呈することになります。
また、学生にとって就職活動の目的は、「早く内定をもらうこと」ではないはずです。就職活動を通じてより自己理解を深め、企業分析が進むことにより、ミスマッチを防ぎ、イキイキと活躍できる職場に出会うための就職活動ができるチャンスです。
企業にとっても、学生にとっても、早く決まることに越したことはありあません。ただ、短期決戦に惑わされることなく、地道な活動に取り組むことが大切です。
(折山 旭/ライフキャリアカウンセラー)
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