新型コロナウイルスに感染後の後遺症が長期化するのを防止出来る?症状改善に鍼灸治療の可能性は!?
JIJICO / 2022年11月16日 7時30分
新型コロナウイルスに感染後の後遺症が長期化するのを防止出来る?症状改善に鍼灸治療の可能性は!?
新型コロナウイルスに感染後急性期症状が落ち着いたら鍼灸治療で体調管理をすると後遺症の長期化を防ぐ可能性はあるのか?!
2019年末に中国・武漢の華南海鮮市場で新型コロナウイルス感染症(COVID-19:以下コロナ感染症)の集団感染が起きてから、3年が過ぎようとしています。2021年2月17日から医療従事者にワクチン接種が始まり、4月12日から高齢者への摂取が始まりました。死亡例は減少していますが、新型コロナウイルスコロナ後遺症(以下コロナ後遺症)に悩まされている人は沢山います。ウイルスが人体に及ぼす影響の解明は未だ進んでいませんが、感染後どの様な状態になるかは、かなり明らかになって来ました。
新型コロナウイルス(以下コロナ)には、2019年から2022年11月4日現在、全世界では6億3180万人(死亡659万人)、日本では2252万人(死亡4.6万人)が感染しています(北里大学伊東秀憲医師集計)。日本人の約5.5人に一人が感染していることになります。発症時には、発熱、咳、呼吸困難や倦怠感などの症状が出ます。当初のウイルス株は、重症化して死亡する例が多く見られました。デルタ株になると国民のワクチン接種が進んだこともあり、重症化する確率が徐々に低下してきました。オミクロン株ではあまり重症化しないと思われています。しかしながら、65歳以上の高齢者は、感染直後に重症化しなくても、基礎疾患の悪化などから死亡する例が非常に多くなっています。
コロナが体内に侵入しても、無症状の人はたくさんいます。濃厚接触者になり検査して感染が判明したという人は、少なくありません。コロナに感染後、14日を経過すると人に感染させる確率は0.6%まで低下します。ウイルスは検出されなくなりますが、発症時から2週間の間に体力は消耗しています。日常生活や出勤が可能になったからと言っても、療養生活で低下した体力がすぐに戻るわけではありません。筋力は、1週間寝たきり生活をすると15%、3~5週間で50%低下します。同時に、循環器、呼吸器、消化器等の全身状態も悪化します。そのため、体力に見合わない運動を行うと、体調が悪化してしまう状態にあります。2週間を経過すると、発症当時の症状はほとんど消失しますが、症状が残る人も一定数います。一旦症状が消えた人でも再感染する例が多く、消失しない症状が徐々に悪化して、動けなくなる例も高い確率であります。
急性期の症状が落ち着いて通院が出来る状態まで回復した後、出来るだけ早い時期に鍼灸治療で体調を整えることは、無理のない回復の助けになる可能性を感じています。清野鍼灸整骨院調布本院では、2021年11月より「コロナ後遺症に対する実証治療」を行っていますが、早期に治療を開始すると、症状の改善が期待出来るようです。
コロナ後遺症の定義とは?
では、コロナ後遺症とは、どのような定義なのでしょうか。2021年10月に発表されたWHO(世界保健機関)によるpost COVID-19 conditionの定義によると、コロナ後遺症は「新型コロナの感染から3カ月以内に発症し、最低2カ月続く、新型コロナ以外に説明のつかない症状」であり「日常生活(仕事や家事)に影響を与える可能性がある」ものと言っています。その特徴として、
1. 新型コロナ患者の「10~20%」が後遺症に見舞われるが その診断は通常感染もしくは回復から3カ月後の時点で判断する 2. 後遺症の症状は 感染・発症した際から続く場合もあれば いったん治った後に新たに発症することもある 3. 時間の経過とともに症状が変わったり 再発したりする可能性もある 感染時の重症度と後遺症の発症いかんには関連性がない
と、示唆しています。 厚生労働省が発行している『新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 診療の手引き』の別冊『罹患後症状のマネジメント』では、「罹患後症状(いわゆるコロナ後遺症)は、COVID-19罹患後、感染性は消失したにもかかわらず、他に明らかな原因がなく、急性期から持続する症状やあるいは経過の途中から新たにまたは再び生じて持続する症状全般をいう」と言っています。清野鍼灸整骨院では、医師の診断や基礎疾患との関連性を含め、コロナ感染後に現れた症状である事を確認した後、コロナの後遺症と思われるとの認識に基づき治療しています。
後遺症に悩む症状とは?
コロナ後遺症の発症率は、調査によって異なります。その理由として、後遺症の定義が一定していない、調査の時期や期間が異なる事が考えられます。ワクチンを接種した割合や感染している変位株が異なると、数値が大きく異なります。『日経サイエンス』(2022年11月号)によると、20人に一人が後遺症を抱えていると言っています。では、後遺症は、どのくらい持続するのでしょうか。『罹患後症状のマネジメント』では、後遺症持続期間は、
1~2か月 23% 3~5カ月 34% 半年~1年 28% 1年以上 15%
と公表しています。後遺症は、長期間続くことが分かっています。『日経サイエンス』(2022年11月号)にある症状出現の割合を見ると、上位にある5つの症状は以下のようになっています。
デルタ株以前の従来株 1. 倦怠感 2. 嗅覚障害 3. 味覚障害 4. 呼吸困難感 5. 脱毛
デルタ株 1. 倦怠感 2. 嗅覚障害 3. 味覚障害 4. 脱毛 5. 頭痛
オミクロン株 1. 倦怠感 2. 頭痛 3. 睡眠障害 4. 呼吸困難感 5. 咳
上記の代表的な症状以外にも、コロナ後遺症とされる症状は、気分の落ち込み、息苦しさ、動悸、不眠、身体痛や勃起不全など、人によって多岐に亘ります。症状の程度も様々です。例えば倦怠感では、一晩寝ると回復する場合もあれば、非常に強い疲労感によって「体が鉛のようで動かせない」「なにかを思考することができない」「言葉が出てこない」「集中できない」場合もあります。散歩や軽い家事をした数時間~数日後に、動けなくなるほどの強烈な倦怠感を感じるという症状もあるようです。コロナ後遺症が長期化すると、思い通りの日常生活や社会生活が送れない状態になり、就学、就業、家庭生活に大きな影響を及ぼす場合もあります。ヒラハタクリニック院長平畑光一医師は、コロナ感染症と診断された後の不調により、多くの人が休職や離職を余儀なくされていると言います。また、働けないことに対する周囲の無理解が、精神的苦痛を生み出していると言っています。後遺症患者の増加は、社会問題になりかねない危険性をはらんでいます。
コロナ後遺症が悪化する経緯は??!
コロナ後遺症は、重症になると徐々に日常生活を送ることが困難になるようです。コロナ外来へ通院後当院に来院される人の話を伺うと、重篤な後遺症へ移行しないように2カ月間は無理をしない生活を送り、病気に対応した適切な行動をとるべきだと、医師より指導を受けているようです。オミクロン株によるコロナ後遺症の方は、年齢に関係なく高い確率で日常生活が困難な状態になる傾向にあります。「日本医療研究開発機構(AMED)の「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」研究班」が示している医師が行う診断基準によると、全身状態の指標を日常生活レベルに応じて10段階で評価したパフォーマンステータス(PS)が、グレード6「調子の良い日は軽作業は可能であるが、週の内50%以上は自宅で休憩している。」やグレード7「身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、 通常の社会生活や軽労働は不可能である。」の状態とされています。コロナ後遺症の人は、この状態に至るまでの間、クラッシュを繰り返し、ME/CFSに移行する場合があり、PEM状態が続いた後、寝たきり状態になるという経緯を辿るようです。
クラッシュ 数日間寝込んで殆ど動けなくなる状態。許容量を超えた運動、ストレスや頭脳労働で発症する。 ME/CFS 「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」という病名。労作後の極端かつ遷延する体調悪化を特徴とし、睡眠障害、高次脳機能障害、自律神経障害などを認める難治性障害 PEM Post-exertional malaise の略。労作後倦怠感。軽い労作後やストレスのあと、5時間~48時間後に急激に強い倦怠感(だるさ)が出てしまう症状のこと。
コロナ後遺症は、自宅療養を続けていても、徐々に症状が進み、悪化していくことが分かります。
コロナ後遺症の回復を妨げている日常生活は何か?!
当院では、コロナ後遺症に対する実証治療を行っている人に、日常生活上のアンケート調査を行っています。アンケートを分析して、コロナ感染後に、発症する人 としない人の違いはあるのかを検討しています。2022年10月9日(日)に、令和4年度第3回大阪府鍼灸師会学術講習会で、コロナ後遺症に対する可能性についての講演をしました。その際、日常生活の指導対象となる傾向を報告しましたが、これが原因だという顕著な傾向は、今の所見いだせていません。ただ、以下の様な傾向があります。
1.冷たい物を多飲 2.低い室温の中で暖房を使用せず生活(冬季) 3.冷房を常時使用して25℃以下で生活(夏季) 4.冷房を就寝中使用(夏季) 5.睡眠不足 6.睡眠の質が良くない 夜遅い時間帯での就寝 7.フローリングの上に直接布団を敷いて就寝 8.日が当たらない北向きの部屋で就寝 9.浴槽に高い温度のお湯を張り入浴 長い時間の入浴
上記は、いずれも内臓機能活動に支障が生じると思われる生活です。健康を維持するには難しい生活なのだろうと考えます。上記生活の改善を提案したところ、実行者から体調が良くなったという声を戴いております。また、日常出来る感染予防法は、鼻うがいです。毎日2~3回鼻うがいを実施することにより、症状の悪化防止に役立つ可能性があります。清野が呼称する養正(ようせい)治療は、日常の適正な生活です。詳しくお知りになりたい人は、清野鍼灸整骨院ホームページ「くらしと養生」をご参照戴きたく思います。
コロナ後遺症の改善に東洋医学の視点を検討する事は必要??
感染可能期間は、発症2日前から発症後14日とされています。最近、コロナ感染発症後の待機期間が明けた2週間前後に来院される方が増えています。その時の症状は、発症直後からの症状が約2週間継続している人とその後新たに出現した症状の人に分かれます。その両方の場合もあります。コロナ後遺症の実証治療を通じて感じることは、従来同じような症状で来院する人と比較すると、1回で改善出来ることはほとんどなく、頻回な治療を要する印象です。しかしながら、鍼灸治療や瘀血治療を繰り返し行う事により症状が改善される例を経験するようになって来ました。
コロナ後遺症の半数は、時間の経過とともに症状が改善します。一方で改善しにくい人や安静にしていても悪化をたどる人もいます。発症後、9日間入院し、退院1週間後に寝たきり状態になり、医師より医療の撤退を言い渡された高齢者(93歳)に1か月間灸治療をしたところ、日常生活を取り戻した症例があります。運が良かっただけかもしれませんが、灸治療に可能性を感じる出来事です。コロナ後遺症でお悩みの人は、症状の悪化を防止するために、東洋医学の視点で治療を検討してみるのはいかがでしょうか。鍼灸治療をご検討頂く場合は、コロナ後遺症に対応可能なお近くの鍼灸院か医師と連携が可能な鍼灸師が勤務している医療機関に、出張治療が可能かも含めお問い合わせをお願いしたく思います。
(清野 充典/鍼灸師)
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