毒親育ちの42歳独身女性「結婚しても一緒に住んでよ」という母が重荷でも実家暮らしを続ける“地方ならではの理由”
女子SPA! / 2024年3月26日 8時47分
そんななか、姉が家を出た。
「結婚してしばらくは近くに住んでいたのですが、姉夫に転勤の辞令が出て、いまは千葉。彼はもともと関東の人だし、こちらに戻ってくることはないでしょう」
◆苦しすぎた灰色の30代
それ以降も姉は何かあれば帰ってきてはくれるが、カスミさんはますます親と家の重みを感じるようになった。
「もう無理、出よう! とやっと決心したのが、30歳目前のとき。そのタイミングで父が倒れてしまって……あーあ、これで家にいなきゃいけなくなったなと思いましたね」
カスミさんは30代を振り返って「覚えていないくらい」という。働き盛りで一家の経済を担っていた父親が倒れ、カスミさんの負担が増えた。父は闘病の末いったんは退院したものの、ほどなくして病院から、今度はがんに侵されていると告げられた。
やがてコロナ禍がはじまり、カスミさんは職場と家と、父が入院する病院を行き来するだけの日々に入る。毎日が息苦しかった。カスミさんが40代を迎えて間もなく、父が他界した。
父を見送り、母とふたりの生活がはじまった。水面は、常に見えている。でもそこまで浮上できない。息継ぎができず苦しいのに、もがくほどに沈んでいく。
◆シングル女性の居場所がない
「友だちの多くは20~30代で結婚して、いまは子育て真っ最中。会いたくても予定を合わせづらいし、行く場所もない。せいぜい休日のランチかな。ひとりで出かけるのもイヤではないのですが、知り合いと会うかもしれないので……」
これは、カスミさんの自意識が過剰というわけではないだろう。都市部では出かける先が無数にあるが、地方では人が集う場所がある程度、決まっている。それから、とカスミさんはつづける。
「都会より人の数が少ないぶん、濃いんですよね。同級生の親はこちらのこと知っているし、こちらも向こうがわかる。家族の構成から親の職業からきょうだいの進学先まで把握し合っています。大人になったらなったで、結婚相手のことも知っている」
お話している最中、カスミさんは何度も「都会はいいですね、他人に関心がなくて」とつぶやいた。都市部には都市部の苦労があるし、他人への無関心がもたらす弊害も多い……なんてことは、カスミさんだって言われなくともわかっている。それでも地元の人間関係の息苦しさから、ついそう思ってしまう。
カスミさんは、服を買うのが好きだった。インタビューの日も、人気ブランドの赤いカーディガンが似合っていた。20代のころは、東京に買い物に出ることもよくあった。
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