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『セクシー田中さん』芦原妃名子さんの漫画が、多くの人から愛され続ける理由

女子SPA! / 2024年6月4日 18時0分

ひとりの人間を、ひと言で表現するのは実に難しいことです。いい面もあれば、悪い面もある。調子がよい日もあれば、悪い日もある。対峙する人が変われば、見え方も変わってきます。そんな人間の本質的な部分を前提に、深く丁寧にキャラクターが設計されているからこそ、どの登場人物も「人間」としての解像度がとても高い。読者は、その奇抜な設定ではなく、人間らしく生きる唯一無二のキャラクターに惹かれるのです。

◆2:決して型にハマらないストーリー展開

誰かを一方的に悪者にしない描き方も芦原先生の作品の特長。例えば、女性への偏見にまみれた36歳の銀行員男性・笙野(しょうの)。はじめは、田中さんを“おばさん!”と呼び止め、朱里のことは“媚びまくって、男つかまえることしか頭になさそう”と決めつけるなど、失礼な発言しかしない人物です。

登場した当初は、筆者も「なんだこの無礼な男は!」「でも、アラフォーのこじらせ男子ってこういう価値観なのかも……?」なんて思っていました。しかし、徐々に彼を見る目が変わっていき、なんなら好きになりました。それは、彼の偏った価値観の背景にある家庭環境や過去の恋愛経験、親切心をもつ人間性が、丁寧に描かれていたから。さらに、田中さんとの対話、交流を通して笙野は少しずつ価値観をアップデートしていくのです。

そこから一気に田中さんと笙野が恋人関係に発展していくのか?! と思った読者も多いはず。しかし、そんな王道展開にはならないのが芦原先生の作品です。恋の矢印は簡単には向き合わないし、“理想的な気もするけど、おばさんだから抱けない!”など葛藤や勘違いをくり返していく笙野。

◆女性だけでなく、男性ならではの生きづらさも描く

また一方で、朱里からの好意に気づきながらも「友だち」という言葉で縛り、向き合うことから逃げてきた朱里の同級生・進吾(しんご)。そして、朱里のことを狙うチャラい広告マン・小西も、男性ならではの生きづらさを抱えています。朱里と小西の恋が「上手くいくのか?!」と思ったら、急に小西と進吾がふたりで男飲みすることになるなど。「えっ! そっち?」と、ありそうでなさそうな展開には驚かされます。そこが面白い。

人間は生きているだけで、さまざまな「想定外」に見舞われるものです。年齢を重ねても、そんな時はうろたえるし、自分の思うように世界は回らない。そんな大人たちのリアルな「ままならない」を、コミカルに、何より愛をもって描いている作品なのです。

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