ホイールは軽いほうがイイはウソ!? バネ下重量を見直してみた
くるまのニュース / 2020年9月22日 8時30分
スポーツカーのチューニングメニューのひとつとして、バネ下重量の軽量化というものがある。具体的にはホイールをより軽量のものに交換する事が多いのだが、バネ下重量を軽くした場合のメリットとデメリットを解説する。
■ところで、「バネ下重量」とはなんぞや?
クルマの操縦安定性や乗り心地に大きな影響を与えるといわれる「バネ下重量の軽減」。では具体的に、バネ下重量とは何を指しているのだろうか。
バネ下とは、文字通り「バネの下」を指している。クルマの場合でいうと、車体をリフトで持ち上げた際、サスペンションに使われているスプリングによって吊り下げられている部分のことを指す。
サスペンションアームや、ナックルとホイールを取り付けるハブ、ブレーキローターやキャリパーといったブレーキシステム、そしてタイヤ&ホイールがそれにあたる。
ではなぜ、バネ下重量を軽くすると、操安性や乗り心地に変化が起きるのだろうか。
走行中、クルマのサスペンションは常に路面からさまざまな力を受けている。カーブを曲がるときはもちろん、真っ直ぐ走っているときも、路面のうねりによってサスペンションは上下し、荒れた路面を走っているときには、細かな振動を受け続けることになる。
このように常に動き続けているものが軽くなれば、動きやすくなるというのはイメージできるだろう。クルマではバネ下重量を軽くすると、サスペンションが動きやすくなり、それがステアリングを切ったときのレスポンスの良さや、加減速の性能、乗り心地に影響を与えることになるのだ。
そのため、速さを求めているレーシングカーは、バネ下重量を軽くするため、さまざまな工夫が凝らされている。サスペンションアームは、形状だけではなく、素材から軽量化が図られ、過去には鋳鉄製がほとんどだったブレーキローターは、いまやカーボン製が主流となりつつある。また、ブレーキキャリパーも、形状の工夫などによって軽量化され、ホイールも軽さを求めてさまざまな工夫がされている。
●手軽にバネ下重量を軽くするには?
しかし、我々が街乗りで使っている市販車で、バネ下重量を軽くしようと思っても、それほど多くの手段があるわけではない。
たとえば軽量のサスペンションアームへの交換は、強度検討書が必要となり、交換後に再度車検を取り直す必要がある。ブレーキシステムの交換は車検を取り直す必要はないが、アフターパーツとして販売されているもののほとんどは、制動力の向上を狙いとしているもので、ノーマルのブレーキシステムと比較した場合、重量が重くなっているものがほとんどだ。
そのため、現実的にバネ下重量の軽減ができる手段として挙げられるのは、ホイールの交換となる。
ホイールは回転するものであるため、軽くすると加速しやすくなるのはもちろん、減速もしやすくなる。そのため、同じタイヤを履いている場合、ホイールを軽くするとサスペンションの動きが良くなるのに加えて、乗り方に気を付けていれば、燃費も良くなる傾向がある。
ただし、ホイールというのは単品で使うのではなく、かならずタイヤとセットで使用するものだ。いくらホイールを軽くしても、重たいタイヤを組んでしまったのでは、意味は半減してしまう。燃費を優先させたい場合には、タイヤの重さや転がり抵抗の小ささも重要になることを覚えておくとよいだろう。
■「バネ下重量の軽減」は、メリットばかりじゃない! デメリットとは?
バネ下重量の軽減は、走りを楽しむという面では有効な場合が多いが、乗り心地面では必ずしもメリットばかりではない。
本文中で、バネ下重量の軽減は乗り心地に影響を与える、という表現をしてきたのは、そのためだ。
ホイールの重量は、クルマの乗り心地に大きく影響を及ぼす
バネ下重量を軽くすると、サスペンションの動きは当然良くなる。そのため、路面のうねりなどに対して追従性が良くなり、乗り心地も良くなることが多い。しかし、荒れた路面などを走行するときの細かな振動に対しては、重たいときよりも動きが敏感となり、かえって乗り心地が悪くなるケースもある。
重たいホイールの場合には、タイヤを押しつぶす力が強いために、細かなギャップの振動などはタイヤが吸収してくれる場合が多い。しかし、軽いホイールではタイヤが振動を吸収せず、車体にまでその細かな動きが伝わってくるということもある。
こうした場合には、振動吸収性に優れたタイヤに交換することで対処は可能だ。といっても、タイヤ選択とその相性は、各ドライバーの運転方法だったり感性によるところが大きいため、走りを楽しむためにバネ下重量の軽減をするのか、あるいは乗り心地のためにおこなうのか、タイヤを交換する前に目的に合わせたチョイスが必要となる。
おおまかにいうと、高級といわれるほど、クルマのバネ下重量はさほど軽くない傾向にある。これは細かな振動を乗員に伝えないために、あえて重くしているといっていいだろう。ファミリーカーなどに純正装着されているホイールが、結構重たいのも同様の意味合いがある。
自動車メーカーは、狙ったカスタマーに合わせて、パーツを選んでクルマ作りをおこなっている。当然、なにかしらのカスタマイズをおこなうと、オーナーにとってのメリットを得ることはできるが、反面、デメリットも出てくることを覚えておきたい。
●チタンボルトは高いだけなのか?
例えば、軽量化を求めて輸入車ではハブボルトを、国産車ではホイールナットをチタン素材のものに交換することがよくある。
たしかに重量は軽く、その点では有効なアイテムではあるのだが、チタンは鉄などと比べると硬く、伸びにくいという特性がある。そのため、締めつけトルクが強いと、破断する恐れがある。
チタンボルトやナットを使う場合には、必ずトルクレンチを使って、締めすぎないよう注意が必要だ。適正の締めつけトルクは、普通車の場合、90−110Nm程度。また、ホイールボルトやナットは、熱が加わることによって緩みが生じるので、定期的に締めつけトルクを確認しておくことも大事なポイントとなる。
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