【試乗】アストンマーティン「DBX」は「ウルス」「ベンテイガ」よりハンドリングマシンだ!
くるまのニュース / 2020年10月8日 19時10分
アストンマーティン初となるSUV「DBX」がついに日本上陸。コンペティターと目されている「ウルス」と「ベンテイガ」に比べて、DBXの強みとは何かを、モータージャーナリスト山崎元裕氏が考察する。
■満を持して登場した「DBX」は、どこまでライバルに迫れるのか!
アストンマーティンが英国ウエールズのセント・アサンの地に設立した新工場から、そのファーストモデルとなる「DBX」がデリバリーされ、ついに日本に上陸を果たした。
1世紀を超えるアストンマーティンの歴史のなかでも、初のSUVとなるDBX。もはや伝統のスポーツカー、あるいはプレミアムカー・ブランドが、SUV市場に進出を果たすことに違和感を抱くことはなくなった。
しかし、アストンマーティンを新たな領域へと導く「セカンド・センチュリー・プラン」と呼ばれる新たなプランにとって非常に重要な役割を果たすことを考えれば、DBXが市場で認められるか否かは、大いに興味深い。
DBXは、すでに触れたようにセント・アサンの新工場で生産される最初のモデルとなるが、同時にそれはこれまでの技術的な経験を駆使して、完全に新設計されたモデルでもある。
今回はこのDBXとともに、お互いに強力なライバルとなり得るだろう2台のモデル、ベントレー「ベンテイガ」、そしてランボルギーニがSSUV(スーパースポーツ・SUV)と名乗る「ウルス」を比較してみることにした。そこには3車3様の個性が必ずやあるだろう。
すでにショーの会場などでそのデザインは確認していたDBXだが、ストリートに導かれたDBXにはやはり独特の存在感がある。それは現代のアストンマーティンが持つエレガントとスポーティの共存だろうか。
●独特の世界観を持つDBXのデザイン
サイズは全長5039mm×全幅1998mm×全高1680mmという堂々としたもので、滑らかな、そして美しい曲面を多用したデザインが、ベンテイガやウルスにはない独特の世界を演出しているのが分かる。
見逃してはならないのはSUVとしての機能性である。キャビンはアストンマーティンとしては初のフルサイズの5人乗りで、リアシートは40:20:40の分割可倒式。その背後には632リッターもの容量が確保されたラゲッジルームが備わるのだから、ボディサイズに対する機能性、実用性は十分に確保されているといえる。
この点でやや大きな差をつけられているのはベンテイガであろう。同じ2列5人乗り仕様でラゲッジルームは484リッター。意外に感じられたのはウルスで、こちらは5人乗り仕様ならば616リッターを確保。実用性はDBX並みに高いのだ。
そのようなSUVとしての機能性を含めて、DBXのエクステリアデザインをもう一度確認する。
以前屋内で見た時には、もっと滑らかで控えめなデザインだと感じたDBXの外観だが、実際にはほかのアストンマーティンと同様に、スポーティな印象は非常に強い。アストンマーティンの象徴ともいえるグリルや個性的なテールセクション、そしてフットワークの力強さを視覚的に印象づけるサイドのプレスライン等々、そのバランス感やラインの流れには一切の破綻がない。
このDBXのエクステリアデザインに対してもっとも対照的なのは、ウルスのスタイルだろう。第一印象から、SSUVという言葉の意味を想像させる個性的でかつ前衛的なスタイルは、いわば速さや力強さをそのままカタチにしたかのようなフィニッシュだ。
六角形やY字型など、こちらも現代のランボルギーニが積極的に使用するデザインモチーフで、一族のメンバーであることを主張する。
マイナーチェンジを受けたばかりのベンテイガのエクステリアも、より魅力的になった。メッシュグリルの大型化、82個のLEDライトからなるマトリクスヘッドランプ。さらに細かくボディを検証すれば、前後フェンダーやバンパー、ボンネットなども新デザインであることが理解できる。
ちなみにリアフェンダーのワイド化は、トレッドが20mm拡大されたことが直接の理由だ。
■DBXが、コーナリング性能ではリードする!?
さっそくDBXのステアリングを握る。スタート&ストップスイッチは、センターコンソールの最上部に位置している。
スーパースポーツと引けを取らないコーナリング性能を発揮するアストンマーティン「DBX」
センターコンソール最上部の中央にあるDボタンをプッシュし、アクセルペダルを踏み込むと、550psの最高出力と700Nmの最大トルクを発揮する4リッターのV型8気筒エンジンは、ターボラグなど一切感じさせることなく、滑らかにDBXを加速し始めた。
最初にきちんとコックピットドリルを受ければよかったのだろうが、試乗を始めてまず驚かされたのが、ステアリングホイールのスイッチ類、とりわけアダプティブ・ドライブ・モードのスイッチが、ステアリングホイールから移動していたことだった。
ステアリングホイールになければセンターコンソールというのは半ば常識だが、そのスイッチは小さく残念ながら操作性には優れてはいない。ウルスのタンブーロ、ベントレーのドライビングモードセレクターのような大きさと扱いやすさがなければ、走行中にモードを変化させることは操作に慣れない限りは事実上不可能だ。
●ハンドリングマシンと呼びたくなるDBX
とはいえ走りの方は実に素晴らしいフィーリングに終始している。簡単に表現するのならば「GT」モードならば、「DB11」のような高性能GTのような快適な走りが、あるいは「スポーツ」モードを選択すれば、「DBSスーパーレッジェーラ」のようなスーパースポーツ級のダイナミックな走りを楽しむことができる。
もっとも魅力的なのは、ステアリングに代表されるシャシの仕上がりだ。どのような速度域でもドライバーの意思に忠実な、というよりもその意思そのものの動きが結果としてDBXの挙動となって表れる。
これと比較すると、ベンテイガもウルスも、やはりわずかにコーナリングで修正を必要とするような場面に出くわすことが皆無なわけではない。DBXのコーナリングはともかく見事だ。
3チャンバー式のエアサスペンション、48V電源による電子制御スタビライザーなどによる効果も、確かに大きい。今回は残るドライブモード、トラクションコントロールさえカットされる「スポーツ・プラス」や、「テレイン」、「テレイン・プラス」と2段階が用意されるオフロードのモードを試すことはなかったが、こちらもドライバーの意思どおりに、スポーティで、また安定した走りを演出してくれるのだろう。
550psのDBXに対して、ベンテイガは同じく550ps、ウルスは650ps。運動性能は圧倒的にSUVVたるウルスが高いが、DBXとて0-100km/h加速を4.5秒でこなし、最高速では291km/hを実現する。
これに9速ATを組み合わせ、EU複合モードでは6.98km/L、CO2排出量では269g/kmを目標値としているというのだから、環境性能的にもまずは十分評価できる数字が達成されるはずだ。
アストンマーティンDBX。それはプレミアムSUVの世界に誕生した、きわめて高い商品力を持つニューモデルだった。
●Aston Martin DBX
アストンマーティンDBX
・車両価格(消費税込):2299万5000万円
・全長:5039mm
・全幅:2050mm
・全高:1680mm
・ホイールベース:3060mm
・車両重量:2245kg
・エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
・排気量:3982cc
・エンジン配置:フロント縦置き
・駆動方式:4輪駆動
・変速機:9速AT
・最高出力:550ps/6500rpm
・最大トルク:700Nm/2200-5000rpm
・0-100km/h:4.5秒
・最高速度:291km/h
・公称燃費(WLTC):6.98km/L
・ラゲッジ容量:632リッター
・燃料タンク容量:85リッター
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)Φ410mmベンチレーテッド・ディスク、(後)Φ390mmベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)285/40YR22、(後)325/35YR22
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