都市型SUV普及もなぜメーカーは4WDに注力? 「お守り」的効果をユーザーが望む訳とは
くるまのニュース / 2021年2月1日 7時10分
現在のSUVでは、スタイリッシュなデザインでオンロード性能(乗り心地)を重視したSUVが主流となっていますが、一方で悪路走破性を意識した多彩な4WDシステムを採用するモデルも増えています。なぜ、都市型のオンロード重視に加えて悪路走破性の4WDに力を入れているのでしょうか。
■変化するSUVニーズ。 オンロードメインから4WD性能も重視?
最近ではオンロード性能(乗り心地)を重視したSUVが主流となっていますが、一方で悪路走破性を意識した4WDシステムを採用するモデルも増えています。
なぜ、都市型のオンロード重視に加えて悪路走破性の4WDに力を入れているのでしょうか。
かつての「SUVブーム」は、約30年前の1980年代から1990年代にあった「四駆ブーム」が原点にあり、トヨタ「ランドクルーザー」、日産「サファリ」や三菱「パジェロ」などのオフロードを得意とするクロスカントリー車が中心的となっていました。
しかし、クロスカントリー車はオフロード性能に特化していたものの、オンロードでは乗り心地が良いとはいえませんでした。
そのため、オンロードでの操縦安定性や乗り心地に重点をおいた、トヨタ「ハイラックスサーフ」や日産「テラノ」のようなライトクロカンが誕生します。
1990年代にはトヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」が登場し、2000年頃からトヨタ「ハリアー」や日産「エクストレイル」、マツダ「CX-5」などの登場により、現在のSUVブームが確立されていきました。
2010年代に入ると、日産「ジューク」、ホンダ「ヴェゼル」、マツダ「CX-3」、トヨタ「C-HR」など全長4mから全長4.5m以下のコンパクトSUVが登場し、それまでのSUVは大きくて扱いにくいというイメージを覆したことで、SUV市場の販売台数も伸びていきます。
こうしたなか、さまざまな変化を経た現在の国内SUV市場の特徴として、全長4m以下のトヨタ「ライズ」&ダイハツ「ロッキー」、スズキ「ジムニーシエラ」といった小型のSUVから、全長5m弱のトヨタ「ランドクルーザー」やマツダ「CX-8」などの豊富なボディサイズがあげられます。
パワートレインにおいてはガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車などニーズに応じて設定されています。
では、直近の動向では国内のSUV市場にどのような変化があるのでしょうか。自動車業界関係者は次のように話します。
「直近の各社SUVに共通する部分としては、オンロード/オフロードの両方で高い走行性能を持っていることでしょうか。
もちろん、メーカーや車種によってその性能差はあります。代表的なものではトヨタが2019年に発売した5代目RAV4がオンもオフも両立したモデルで2WDに加えて異なる3つの4WDシステムを採用しています。
また、コンパクトSUVで売れ筋のライズでも前後輪トルクの配分を変更する機能が備わっていたり、マツダでは4WD車に悪路でのスタックから脱出するための機能を新たに備えるなど、基本はオンロードメインながらいざというときに対応出来るようなシステムを採用する例が増えています。
これは一概にいえる理由はないですが、近年ではアウトドア・キャンプが流行っているほか、自然災害も増えていることもあり、『いざ』に対応出来るクルマへのニーズが高まっていることは背景にあるといえます」
また、4WDを求めるユーザー動向について、東北地方の日産販売店では次のように話しています。
「元々、SUVではエクストレイルが高い悪路走破性を持っているイメージがあるからか、『2WDと4WDで悩んだが、災害時に4WDのほうが安心だからそっちを選ぶ』というような声は聞きます。
また、先代『ノート e-POWER』では途中から4WD仕様が追加され、多くのお客さまに好評を頂いております。新型ノートではまだ4WD仕様が発売されていませんが、すでにいくつもの問合せを頂いています。
お客さまの4WDに対する印象としては、本格的な性能を求められるよりは、お守り的に4WDを選ばれているという印象でしょうか」
※ ※ ※
30年以上の歴史を経て、本格的な悪路走破性を目的とした4WD性能を誇るクロスカントリー車からオンロード性能(乗り心地)を重視したSUVに変化を遂げてきました。
最近では、乗り心地を向上させつつ、万が一の状況でも対応出来る4WD性能を求めるニーズによって、ある程度の状況下であれば万能な4WDが増えてきているようです。
■なぜスバルはAWD(4WD)比率が高いのか
世界的に見てもAWD(4WD)販売比率が高いメーカーがスバルです。
AWDの販売比率は、国内では87.4%(OEMモデルは除く)、世界では98%という他メーカーをはるかに凌駕する数字といえます。
とくに東北地方においては、スバルの国内登録車シェアを上回る数値となり、なかでも山形県におけるスバル車のAWD比率は95.4%(2017年度データ)にも上ります。
これは、スバルが国内販売するモデルにおいて、「レヴォーグ」「XV、「レガシィアウトバック」「WRX S4」「WRX STI」は全車AWDのみの設定ということが挙げられるほか、売れ筋の「インプレッサ」では2WDを設定するものの、4WDの人気が高いことが要因です。
AWDにこだわる理由について、スバルは次のように説明します。
「安全を最優先させることを目的とし、水平対向エンジンとシンメトリカルAWDを組み合わせて操縦安定性を図っています。
操縦安定性が高いということは事故などの危険回避性能が高いということであり、その結果、ハンドリング性能が良くてスポーティで楽しい走りを実現しました。
また、水平対向エンジンとAWDの安定性だけでなく、運転支援システム『アイサイト』の全車標準搭載や視界の良さなども含めて、総合安全性能を重視しています」
※ ※ ※
スバルといえば「AWD(4WD)」というイメージが強い? なかでもレヴォーグは高い人気を誇る
2020年では、新型レヴォーグが発売されその安全性の高さから多くのユーザーから評価されているといいます。
なかでも、高度運転支援システム「アイサイトX」搭載グレード構成比が受注台数全体の94%と高いことからも安全性を求めるユーザーが多いことが分かります。
近年多発する自然災害では、水害や大雪などでは最低地上高が高く4WDのほうがリスクを回避できる可能性が高いとされているほか、あおり運転や踏み間違いなど危険行為を少しでも避ける要素としてさまざまな安全装備が採用されています。
こうした「いざというとき」に少しでも安心出来る要素が4WDや安全装備が普及する理由なのです。
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