ありえない魔改造! ベントレーV8を搭載したポルシェ「911」とは
くるまのニュース / 2021年3月10日 11時50分
ポルシェ「911T」にベントレーのV8エンジンを搭載したホットロッド仕様があった。エンジン搭載位置も変更された魔改造の1台を紹介する。
■「911」のフロントにエンジンを搭載するのはありか!?
カスタムカーのジャンルには、多種多様なものがある。そのひとつとして上げられるのが、ホットロッドだ。
●1995 ベントレー/ポルシェ「ターボ 2シーター スペシャル」
アメリカ生まれのこの文化は、フォード「モデルT」などのクラシックカーのボディをベースに、強力なエンジンを搭載し、サスペンション形式を変更。さらには軽量化もおこない、ルーフはチョップドトップ、つまりピラーを短縮して屋根を低くする、というカスタムをおこなうというスタイルが基本となっている。
カリフォルニア半島を舞台におこなわれる、バハ1000に出場した、フォルクスワーゲン・ビートルをベースとしたバハバグも、ホットロッドといっていいクルマのひとつだ。
ローライダーやマッスルカーと並び、ホットロッドはアメリカ生まれといいつつ、世界で楽しまれているカスタムのひとつとなっている。
今回紹介するこのポルシェも、そんなホットロッド仕様車とでもいおうか。
製作したのは、フランス・リヨンに本拠を構えるダントン・アート・カスタムのアレクサンダー・ダントン氏だ。
ダントン氏はフェラーリやランボルギーニなど、エキゾチックカーをベースとしたホットロッドの製作で、ヨーロッパで知られている人物である。
このポルシェは、1971年モデルの「911T」、つまりタルガトップをベースとして製作されたものである。元はタルガトップだが、それをさらにチョップドトップ化しているため、アクリル製に交換されたフロントウインドウは、ごく小さいものとなっている。
搭載されているエンジンは、ベントレー「ミュルザンヌ ターボ」で使われていた、V型8気筒6.75リッターエンジンをフロントに搭載。
写真を見た限りでいうと、機械式燃料噴射時代のものではないかと思われる。出力は当時、ロールスロイスやベントレーは数値を公表していなかったため不明。
そういえば、かつてロールス・ロイスのある発表会に参加したとき、前方に座っていた若い記者が、ロールス・ロイスのスタッフに対して、最高出力と最大トルクの数値を質問したことがあった。
そのとき、自分の斜め前に座られていた、いまは亡き小林彰太郎氏が小さい声で「そんなこと訊くもんじゃないよ」とつぶやかれていたのを思い出した。
当時、ロールス・ロイスやベントレーは、意訳だが「顧客が思い通りに走るために必要なだけのパワーを備えています」といういいかたをしていた。であるにも関わらず、数値を訊くというのは野暮、ということだったのだろう。自戒も含めて、胸に刻んでおこう。
■ベントレーV8を搭載したポルシェ「911」の正体は?
話を戻すが、もちろん、ポルシェのボディにそのまま、ベントレーのV8エンジンを搭載するのは不可能だ。なにしろポルシェのエンジンは、リアマウントである。
そのためこのクルマは、フレームからすべてをオリジナルで製作。サスペンションもフロントは、ピロボールジョイントを採用したアームを組み合わせた、ダブルウイッシュボーン式とし、リアはリジッドとなっている。
●1995 ベントレー/ポルシェ「ターボ 2シーター スペシャル」
ベントレー「ミュルザンヌ ターボ」で使用されていたV型8気筒エンジン(C)Bonhams 2001-2021
コックピットも軽量化を考えた、簡素なつくりだ。
フルバケットシートはアルミ材で成形されていて、おそらくはベントレーのオートマチックミッションを使っているために、ペダルはふたつのみ。
ブレーキペダルは、これもおそらくだが、チルトン社製のオルガン式を採用している。
メーター類はすべてセンターコンソールに装備されているが、速度と水温、油圧、燃料計という4つのみが配されている。その下には5つのトグルスイッチが並ぶが、もっとも右がヘッドライト、左から2番目は送風というのはわかるが、あとは不明だ。
もちろんこのクルマは、公道を走るためのものではない。あくまで私有地で楽しむためのものだ。
高等裁判所からの命令でオークションへの出品となっていることから、所有者に金銭トラブルがあったということが想像できるが、それ以上の経緯も不明。現在入札中で、予想落札価格は5000−1万ポンド(邦貨換算約75万円−150万円)となっている。
公道を走れないということが、オークション価格に影響を与えてしまいそうだが、ホットロッド好きならば注目すべきワンオフ製作の個体であることには間違いがないだろう。
ここから、さらなるカスタムを加えていくためのベース車としての購入意義もありそうだ。
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