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完熟の味わい「993型」ポルシェ 911が真の完成版と呼ばれ続ける理由【中古車至難】

くるまのニュース / 2021年3月18日 12時5分

今や性能そのものよりも味わいによって人気を集める空冷ポルシェ、その最終型が993型「911」だ。1964年の901型から993型まで続いた空冷モデルのなかでも、中古市場での上昇ぶりは異常なものとなっている。その揺るぎない人気の高さはどこにあるのだろうか。

■新旧が融合する汽水域を思わせるクルマ

 フェルディナント・ポルシェ博士がいったとされる「最新のポルシェが最良のポルシェ」という有名なフレーズ(実際はPorscheではなく“The newest car is always the best”といったらしいが)に当てはめるまでもなく、こと性能に関しては、間違いなく最新の911こそが最良の911だろう。

 しかし、ラップタイムを競うわけでもない公道で「性能」を追い求めることに疑問や虚しさを感じたとき、人は空冷世代のポルシェ911に魅力を覚える。

 そして“それ”を覚えたときに注目したい存在のひとつが、「993型」。1993年から1998年まで製造された最後の空冷911であり、空冷911のいわば完成形といえる世代だ。

 993型のポルシェ911とは、前身である964型の多くを踏襲しつつも、いくつかの抜本的な物事を大きく変えることで「ほぼ完成形」に至った空冷ポルシェ911だった。

●1993年 ポルシェ 993型「911」

 964型から踏襲したのは、まずは3.6リッターの水平対向6気筒エンジン。前期型993カレラのエンジン最高出力は272psと、964型のそれと比べて22ps増強されてはいるが、内径100mm×行程76.4mmというボア&ストロークは964型とまったく同じ。

 しかしマニュアルトランスミッションは、スポーツカーといえどもより好燃費を求めるようになった時代に合わせ、5速MTから6速MTに変更された(とはいえオートマチックのティプトロニックSは4速タイプのままだったが)。

 それよりも大きな、というか決定的な変更点は、リアサスペンションがそれまでのセミトレーリングアーム式から「マルチリンク式」に変更されたことだろう。

 リアに極端な荷重がかかるという、ポルシェ911の独特なメカニカルレイアウトの弱点をカバーしつつ、リアタイヤへの適切な駆動力伝達をおこない、姿勢の安定と操縦性の向上を目指して採用されたリアのマルチリンクは、空冷ポルシェ911としては“革命的”とすらいえる走行安定性を993型にもたらした。

 そして同時に、ややかさばるマルチリンク式サスペンションを格納するために広げられたリアフェンダーは、このクルマに図らずも(いや、図ったのか?)ある種の造形美をもたらすことにもなった。

 だがそれでいて、かなり「大きなクルマ」と化した現代の最新世代911とはまったく異なる、往年のポルシェ911と趣を同じくするタイト感も有した最後の世代であったことも、今となっては993型ポルシェ911の大きな魅力といえる。

 新車当時は「けっこう横方向に大きくなったなぁ……」と感じた993型だったが、2021年の視点から見ると、「可憐なサイズですねぇ……」としかいいようがない。

 1996年には、エンジンのバルブ径とバルブタイミングの変更をおこなうとともに、可変吸気機構の「バリオラム」を採用。これにより、カレラ系が搭載する空冷水平対向エンジンは3.6リッターの場合でプラス13psの285ps、3.8リッターとなるカレラSの場合で15ps向上の最高出力300psを発生するに至った。

■その完成度ゆえに中古市場で急上昇

 現在、中古車市場で探すことができる993型の各モデルと、それぞれの相場はおおむね下記のとおりである。

●カレラ(1994年発売):自然吸気の3.6リッターエンジンを搭載し、後輪を駆動する基本モデル。
・カレラ(6速MT)|680万−1200万円
・カレラ ティプトロニックS|590万−1100万円

●ターボ(1995年発売):3.6リッターエンジンに片バンクずつKKK製k16型タービンとインタークーラーを装着してツインターボ化。最高出力408psで、駆動方式は4WD。
・ターボ|2000万−3000万円

●カレラRS(1995年発売):専用のM64/20型自然吸気3.8リッターエンジン(最高出力300ps)を搭載。ボディ補強をおこなうとともに、後席の省略やトリムの簡略化、遮音材や防錆のためのアンダーコートを最小限にするなどして軽量化されている。
・カレラRS|「価格応談」が大半なため相場不明

●カレラ4S(1996年発売):ターボ用のワイドボディに加え、ブレーキその他にもターボ用の部品を流用した4WDモデル。
・カレラ4S|1300万−1600万円

●ターボS(1996年発売):911 GT2から流用された430psのM64/60R型エンジンを搭載する、ターボの高出力バージョン。
・ターボS|「価格応談」が大半なため相場不明

●カレラS(1997年発売):1997年のみ製造されたワイドボディを有するカレラで、日本市場限定モデル。センターで分割されたエンジンフードは「356B」のオマージュ。
・カレラS|1000万−1500万円
・カレラS ティプトロニックS|1100万−1300万円

●1993年 ポルシェ 993型「911」

サスペンションや空力を最適化したことで、空冷911のなかでももっとも快適性能に優れている1台といえる。新車価格はカレラが1025万円、ターボが1760万円(C)Porsche AGサスペンションや空力を最適化したことで、空冷911のなかでももっとも快適性能に優れている1台といえる。新車価格はカレラが1025万円、ターボが1760万円(C)Porsche AG

 ネオクラシックブームの影響で相場は世界的に高騰しており、とくにカレラRSやターボ、ターボSあたりが極端に高値となっている993型ポルシェ911ではある。

 しかし、「往年の911と新世代911の端境期」に誕生し、両者の魅力が絶妙にブレンドされている993型は、コンディションさえ良好であれば今後も資産価値を増していくことは間違いない。そしてそもそも資産価値うんぬん以前の“精神的な悦び”を、乗る者に与えてくれるクルマだ。

 相場は鬼のように高騰しているが、役モノ以外はまだ「宇宙空間」にまでは達していない。無論、無理をする必要などないが、もしも買える状況にあるのであれば──ぜひ手に入れていただきたい。

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