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BMWの「走る歓び」を本気で味わうなら今こそ「E36型 M3」を手に入れるべき理由【中古車至難】

くるまのニュース / 2021年5月9日 19時10分

メルセデス・ベンツ、アウディと共にドイツ御三家のひとつに数えられるBMW。とくにBMWはスポーツ性能にもっとも力を入れているメーカーとして知られている。そのBMWらしさを象徴するのが、サーキット走行を前提とした「M3」だろう。今回紹介するのは2代目となる「E36型 M3」。1993年製の古いM3を今あえて選ぶ理由は一体どこにあるだろうか。

■生まれも育ちもサーキット

 もしかしたら、BMWのことなど屁とも思っていない各位もいらっしゃる可能性はある。だがそんな各位でも、BMWの「Mモデル」にだけは一目置いているに違いない。

 現在、Mモデルの開発やモータースポーツ用パーツの研究開発、特別注文モデルの生産などをおこなっているBMW M GmbH(BMW M社)がBMWの子会社として誕生したのは1972年5月1日のこと。発足当時はBMW Motorsport GmbH(BMWモータースポーツ社)という社名だった。

 当時モータースポーツの世界で連戦連勝を重ねていたBMWだったが、自社だけではモータースポーツ関連事業や作業の一部しかカバーできず、多くの部分をチューニングメーカーに頼るという状況であった。

 そのため、モータースポーツに集中的に取り組む目的で新たに設立されたのが「BMWモータースポーツ社」だった。

 1970年代後半まで、BMWモータースポーツ社はレーシングカーのみを製造していた。しかし「サーキット以外でもM Powerを堪能したい」というユーザーの声に応えるため、まずは1974年、BMWモータースポーツ社のエンジニアは初代「5シリーズ」のサスペンションとブレーキに関与。

 そして1978年にはMエンブレムを付けた最初の市販車である「BMW M1」でセンセーションを巻き起こし、1980年には、初代5シリーズに「635CSi」の2バルブ6気筒エンジンを搭載した「M535i」を開発・製造した。

 その後、Mモータースポーツ社はF1用ターボエンジンの開発と供給をおこない、1984年には、M1の高回転型4バルブ直6エンジンを「M635CSiクーペ」と「M5」に搭載。プロイセン通りで、ひとつずつ手作業で組み立てられたM5は、瞬く間に伝説的存在となった。

●1993年−1998年 BMW E36「M3」

 F1での活動が終了すると、BMWモータースポーツ社は新たにツーリングカーレースにエネルギーを投入するようになった。その結果、1986年に伝説の初代BMW「M3」が誕生する。

 レースマシンとしてタイトルを総なめにした初代M3は、市販車としても予想を超える販売台数を達成。初代M3の市販バージョンは、2.5リッターの「M3スポーツエボリューション」600台と、手作業で組み立てられた「M3カブリオレ」765台を含む計1万7970台もの台数が販売されたのだった。

 ツーリングカーレース参戦を目的としたモデルの開発は初代M3で終わったものの、その後もBMWモータースポーツ社は「2代目M3」「2代目M5」などの超ハイパフォーマンスロードカーを続々と開発。

 そして1992年には、通常のオプション装備の範囲を超えるカスタムメイドを実現させる「BMWインディビデュアル」もBMWモータースポーツ社の担当業務となり、1993年8月1日には社名を「BMW M社」に変更した。

 現在は冒頭で記したとおり、「BMWを超えるBMW」であるMモデル各車の開発とモータースポーツ用パーツの研究開発、特別注文モデルの生産などをおこなっているBMW M社なのであった。

■おすすめはアナログ感の溢れるE36

 以上のような歴史を持つBMW M社が開発しているのがMモデルなわけだが、その中古車を今狙うとしたら、果たしてどれが「最適」なのであろうか?

 といっても、そんな議題は(自分で挙げておきながらアレだが)きわめて愚劣である。クルマに関する好みや求めるものは人それぞれであり、予算もまた人それぞれというほかない。つまり「一般的に見て最適」などというものはなく、「それぞれにとっての、それぞれの最適」があるだけなのだ。

 だがそれでもあえて、中古車ジャーナリストとして「最適」ではなく「個人的に今、おすすめと考えるモデル」を挙げるとしたら、それは「E36世代のM3」ということになるだろうか。

 クルマに詳しいと推測されるVAGUE読者各位には今さらの話かもしれないが、マニアからは「M3B」または「M3C」と呼ばれるE36世代のM3は、1990年(日本では1991年)に発売されたE36型BMW 3シリーズをベースとするMモデルとして、1993年に登場した。

 搭載エンジンは、当初は排気量3リッターの直列6気筒自然吸気「S50B30型」。286psの最高出力を発生するこちらのエンジンを搭載した世代が、前述した「M3B」だ。トランスミッションは5速MTである。

 1995年にはマイナーチェンジがおこなわれ、搭載エンジンは3.2リッターの「S50B32型」直列6気筒に。これは、インテーク側とエグゾースト側両方のカムシャフトの可変バルブタイミングシステムとして開発されたダブルVANOSを初めて採用したエンジンで、最高出力はリッター100ps超えの321psとなった。同時にトランスミッションも6速MTへと進化している。

 1997年には、BMWがF1で培った技術をフィードバックした6速セミAT「SMG」も追加され、1998年に生産終了となった──というのが、E36型BMW M3の大まかなヒストリーだ。

●1993年−1998年 BMW E36「M3」

E36型はM3の歴史でもっとも大規模なアップデートが施されたモデル。ボディはピラーを少し寝かせた落ち着きのあるクーペ風へ、エンジンも全車DOHC化されている(C)BMW AGE36型はM3の歴史でもっとも大規模なアップデートが施されたモデル。ボディはピラーを少し寝かせた落ち着きのあるクーペ風へ、エンジンも全車DOHC化されている(C)BMW AG

 そしてなぜ今、いささか古い世代である(いや、古すぎる世代というべきか?)E36世代のM3をおすすめしたいかといえば、理由は「その古さゆえ」である。

 衝突安全性能やその他の理由により肥大化せざるを得なくなり、そして人々が求めるものに応じて「電子的満漢全席」とならざるを得なくなった現代のMモデルと違い、E36型M3はきわめてコンパクトで、2021年の視点で見るならばきわめてプリミティブである。そのサイズ感と原始性こそが、今となっては逆に「ほかのどこにもない宝物」なのである。

 もしもそれを疑う人がいるとしたら、どうか近隣のBMW専門店を訪ね、E36型M3の現物を──久しぶりに──その目で見ていただきたい。そしてもしも可能であるならばば、コックピットにも座ってみていただきたい。私がここでいっていることが、おそらくはするりと肚落ちすることだろう。

 ただし問題は、今となってはE36型M3の中古車はきわめて流通量が少なく、「大人が買うにふさわしい品質のもの」の数はさらに少ないということだ。

 だがそれでも──100万円台などで売られているものはさすがにおすすめしかねるが、300万円以上、あるいは「ASK」と表示されているような個体を、どうか一度見にいって欲しい。3リッターの前期型でも3.2リッターの後期型でも構わない。セミATのSMGだけは避けるべきだが、MTであれば5速でも6速でもいい。

 とにかく「コンディションのよいE36型M3」を見つけることができたなら、それは間違いなく──クルマ好きの男にとっては──天国への階段である。

 古いクルマゆえ、しっかり維持するためにはまずまずの維持費もかかるが、まぁそんなことはどうだっていいじゃないか。

 なにせ相手は、もう二度と似たようなモノは新品としては手に入れられない「世界遺産」みたいなものなのだから。

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