大型トラックの最高速度「100キロ」に引き上げ!? 物流「2024年問題」対策に「有効」は本当か? 高速道「80キロ規制」撤廃で何が変わるのか
くるまのニュース / 2023年9月2日 9時10分
警察庁は2023年7月13日、大型トラックの速度制限引き上げを考える有識者検討会を設置しました。現在80キロに制限されている最高速度が100キロにするための検討で、物流問題の解消にも役立つといいますが、どういったことなのでしょう。
■「えっ…!」トラックの速度制限を上げれば労働環境が「改善される」!?
2023年7月13日、警察庁は、現在時速80kmに制限している大型トラックの高速道路における最高速度の引き上げに向け、有識者検討会を設置することを表明しました。
いわゆる「2024年問題」への対策として検討されるものですが、はたして、トラックの最高速度を引き上げることで、本当に物流危機は解消されるのでしょうか。
2024年は、NTTのISDN回線サービスの終了や、働き方改革の一環として2019年に規定された、時間外労働の上限の5年間の適用猶予が終了することなどによって、日本社会に深刻な影響をもたらすとされています。
これを一般に「2024年問題」といわれています。
そんな2024年を目前にして、日本政府も本腰を入れて検討を始めることとしたようですが、なぜ2024年問題にトラックの最高速度が関係してくるのでしょうか。
大型トラックには、道路に示されている最高速度とは別に、道路交通法で総重量ごとに最高速度が規定されています。
車両総重量が8トン以上の大型トラックおよびトレーラーは時速80キロ、車両総重量8トン未満のトラックおよび軽トラックは時速100キロが上限です。
例えば、最高速度が時速120キロの区間をもつ新東名高速道路でも、トラックはこの最高速度に従って走行しなければならず、最高速度を超えることがないよう、現在の大型トラック(総重量8トン以上)には、アクセルペダルを踏んでも一定速度以上で加速ができなくなる「スピードリミッター」の装着が徹底されています。
このスピードリミッターが装着されていると、およそ時速90キロまでしか出すことはできません。
この最高速度を引き上げることで、物流の流れを良くし、さらには労働条件を改善しようというのが、冒頭で紹介した有識者検討会で検討されることです。
大型トラックの最高速度を引き上げることで懸念されるのは、やはり安全性です。
そもそも現在の時速80キロという最高速度制限が設定される前、これらの大型トラックのなかには、運搬の遅れを取り戻すため、時速100キロを大幅に超える速度で高速道路をかっ飛ばすトラックも多く、危険だとして問題視されていました。
時速80キロという最高速度は、この流れのなかで設けられたわけです。
それを再び緩和することに対して、疑問視する声が多いのも当然のことといえます。
現在は、一定速度を保って走行する「クルーズコントロール」のような運転支援技術がトラックにも普及しており、さらに万が一の運転ミスや居眠りといったケースに対しても、クルマが人を守る先進安全装置の普及も広がっています。
時速100キロに抑えるのであれば大丈夫なのでは、と楽観視する意見も見られますが、一方で「物流が滞る恐れがあるので速度上限を引き下げる」という考え方が、はたしてそれでいいのか、という指摘もあります。
時間外労働に上限が設けられたのは、「労働者が健康かつ安全に働けるようにするため」。
一定の収入を得るため、長時間労働をせざるを得なかったトラックドライバーの負荷を減らし、適切な労働時間で、適切な報酬を受け取り、健康的に仕事をしていける業界に変えていくのが、本来の目的です。
最高速度を上げることではなく、労働時間や労働負荷に対し、満足のいく報酬が得られるよう、輸送業界として待遇改善をまず行うべきではないかと、指摘されているのです。
※ ※ ※
物流の問題は、送料の上昇や、翌日配送のような特急配送業務がなくなる可能性があるなど、私たちの暮らしにさまざまな影響を及ぼします。
日本の物流を維持するためにも、長距離ドライバーの安全と健康的な生活は改善されていく必要があります。
それには、新たなルール作りや安全運転に関わるテクノロジーの普及も急務です。
冒頭の有識者検討会は、年内をめどに速度規制の見直しに関する提言を取りまとめる方針とのこと。
いかなる案が出てくるのか注目です。
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