「割り込み厳禁」のトラック！ 割り込んでしまったらどうなる？ 特に気になる「馬運車」 馬に対する影響は？

競馬に出場する競走馬を運んでいるクルマを「馬運車」と言います。馬運車は「競走馬輸送中」と書かれていることが多く、周囲のドライバーに状況を伝えると同時に注意を促していますが、なかには「割込厳禁」と明確に記されている場合もあります。

■競走馬を運ぶ「馬運車」とは？

　走行中、時折見かける「馬運車」は、競馬に出場する競走馬を運んでいるクルマを指します。
　
　馬運車は「競走馬輸送中」と書かれていることが多く、周囲のドライバーに状況を伝えると同時に注意を促していますが、なかには「割込厳禁」と明確に記されている場合もあります。

　馬運車とは、競馬に出場する競走馬を運ぶためのクルマです。

　改造されたトラックのような大型車両に「競走馬輸送中」と書かれていることが多く、見かければ一目でわかるようになっています。

　時折、馬のイラストや「JRA」のロゴがトラックに記載されていることもあり、いずれにせよ周囲のドライバーに馬を運んでいることが瞬時にわかるような外観といえます。

　トラックの仕様も通常の大型トラックとは異なり、特別なサスペンションが搭載されているほかにも、荷室部にエアコンが設置されているなど、輸送する馬のために特別な設計がなされています。

　また、運転のスタイルも通常のトラックとは少し異なり、馬は臆病で敏感な生き物であることから、急発進や急ブレーキ、カーブの際に速度をしっかりと落としてゆっくり曲がるなど、ドライバーも馬のために細心の注意を払っています。

　そんなVIPとも言えるような待遇を受けている競走馬ですが、走行中に馬運車を見かけた場合は、運転手自身も注意して走行することが推奨されています。

　理由としては、万が一自分が原因で事故が発生し、馬にケガを負わせるなどのことがないようにするためです。

　競走馬は骨折などすると、最悪の場合は殺処分を受けるケースなどもあり、損害賠償などを請求されてしまった場合、かなり高額になることが予想されます。

　馬はもちろんですが、何より自分自身を守るためにも、走行中の馬運車を見かけた際、いつも以上に車間距離を取ることや、急な車線変更をしないように注意が必要です。

■馬運車に貼られた「割込厳禁」 もし割り込んだら違反になる？

　そんな馬運車は、競走馬を慎重に運んでいることから、走行スピードが比較的低速であったりなど、ほかのクルマとは異なる走り方をしている場合があります。

　馬運車のなかには「割込厳禁」と大きく赤字で書かれているものがありますが、その表記について、警視庁の交通相談コーナーの担当者は、次のように話します。

「前提として、割り込みに対する違反は存在するため、馬運車であろうと急な車線変更などによる割り込み行為は禁止されています。

　その一方で、馬運車に対して割り込んだ場合、違反になるという道路交通法は存在しません。

　また、『割込厳禁』と書かれているから、違反になるというわけではなく、警察の許可を得て他車よりも優先されているというわけでもありません。

　ですが、馬は臆病な性質を持つため、割り込んだ結果、急ブレーキをかけてそれに驚いて車内で馬が暴れ出し、事故につながるという恐れがあります。

　そうなった場合は、割り込んだドライバーに対して多額な損害賠償が請求される可能性も想像できるでしょう。

　そのような二次災害を避けるためにも、割り込みに対する啓発をしているものと考えられます。

　優先権を持っているわけではありませんが、割り込みそのものは前提として違反行為であることを考えると、嘘をついているわけでもないので、周囲のためにも啓発しているといえます」

どんなクルマに対しても割り込みはダメ！

　道路交通法第32条によると、割り込みは、車両が停止等しているほかの車両の前に、無理に進入（進路変更）することを指し、違反した場合は交通違反となり、罰則の対象となるとされています。

　また、初心運転者や高齢運転者に対する割り込みも、初心運転者等保護義務違反の観点から禁止されています。

※ ※ ※

　馬は非常にデリケートな生き物で、長時間の輸送のストレスにより「輸送熱」と呼ばれる体調不良を起こしてしまうケースもあると言われています。

　そんな馬をベストな状態で運ぶためにも、馬運車のドライバーも気を遣いながら運転しており、周りのドライバーも配慮してあげることが望ましいといえます。