右折待ちゼロは「逆転の発想」から!? 衝突事故防ぐ画期的なアイデア「反転交差点」実用化へ本研究開始 “矢印信号”もいらない!一体どんな構造なのか
くるまのニュース / 2024年4月5日 9時10分
国土交通省の新技術研究として、「反転交差点」という先進的な交差点構造の本研究が始まりました。安全でスムーズな走行を実現する新発想の交差点、一体どんなものなのでしょうか。
■アメリカの先進事例に着目
国土交通省が採択して研究される「道路に関する新技術」で、交差点の課題解決に期待される新たな技術が、研究スタートとなります。
「反転交差点」と呼ばれるこの新技術、いったいどんな技術なのでしょうか。実現すればどう便利になるのでしょうか。
交差点の信号待ち渋滞を解決する策としては「ラウンドアバウト」というものがあります。交差点を環状にすることで、南北側も東西側も交差点内で同じ方向へ進み、信号が無くても接触なく交差点を通過できるというものです。
しかしラウンドアバウトが機能するのは、あくまで通過交通が比較的少ない場合のみ。大都市部ではなかなか効果的に導入できません。
そこで他の事例として、可能性が提言されているのが「反転交差点」です。横浜国立大学の田中 伸治教授は、今回の採択研究で、日本へ導入するための設計指針の取りまとめなどを行いたいとしています。
気になる「反転交差点」の中身ですが、これは主に高速道路を立体交差で横断する道路などの場合に、「ランプへ入るための右折待ち」で時間損失が発生したり、直進車や合流相手と衝突事故を起こすリスクを低減する期待があります。
構造としては、交差点内部で「車線を左右入れ替える」というもの。交差点進入時に車線が右側へスイッチし、交差点を出るときにまた左側へ戻る形です。
信号は「交差側上下線→交差側右折矢印→ランプから一般道への流入」という3パターン切り替えではなく、「交差側上り→交差側下り」の2パターン切り替えに減ります(ランプ部の信号はうまく同期)。
車線を反転させることで、右折矢印信号を使わなくても、各方向からの右折・流入がすべて交差無しで実現することになるというわけです。合流する時に接近車を気にする必要がなく、右折中に正面からクルマが突っ込んでくることもありません。まさに「逆転の発想」と言えます。
アメリカではジョージア州やユタ州、ミネソタ州などのIC交差点で採用事例があります。現地ではDiverging Diamond Interchange(DDI)と呼ばれています。
なお、似た構造としてContinuous Flow Intersection(CFI)があるといいます。これは「右折レーンだけあらかじめ対向車線の反対側へスイッチさせておく」というもの。スイッチ部で信号が必要ですが、本来「前から直進車がやってくる中、タイミングを見計らって右折する」という危険な状況であるのを、「右折車と直進車を信号制御で交互通行にする」というのがポイントです。
田中教授は日本でこれらを導入したらどうなるかと、仙台の国道4号の巨大交差点「六丁の目交差点」をモデルとして、仮想的に反転交差点を作成。シミュレーター上で被験者に運転してもらいました。2018年の論文では、反転交差点での運転実験の結果、17人のうち1人がうっかり違う車線に誤進入したものの、2回目の運転では全員正しく走行できたそうです。
実験後のアンケートでは、2回目になると全員が「迷いを感じなかった」「少し迷いを感じた」程度におさまり、利用のしやすさについては、17人中8人が「とても/少し利用しやすくなった」、6人が「変わらない」、3人が「少し利用しにくくなった」と回答しており、多くはすんなりと慣れている様子となっています。
そして、いよいよ具体的な検討に向けて、2022年から国のFS研究(事業化可能性の調査)をおこない、満を持して2024年度から本研究となった形です。
田中教授は「このような新しい交差点形式を日本にも導入するために必要な、構造面・施設面での配慮や、利用者の受容性にも着目した評価を行い、設計指針のような実務につながる成果をとりまとめたい」としており、「関係者間の合意など条件が整えば、実証実験も行えるとより望ましいと思います」と話しました。
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