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無酸素環境で生きるバクテリアの未知なるサバイバル戦略

共同通信PRワイヤー / 2024年6月3日 18時0分


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202405291477-O2-L3oqrFpA


増殖中のバクテリアが近くに存在しない場合、細胞壁のないIA91株の球状の細胞は膨圧に耐えられず、細胞が膨張し、ついには死んでしまいます。このような致死性のリスクと引き換えに得たものは何でしょうか。ゲノム配列情報から推定された細胞壁合成の化学反応経路に基づくと、細胞壁を自分で一から合成するよりも他のバクテリアから得たMPを取り込んで利用した方が、合成に必要なエネルギーを7割も削減できると算出されました。さらに、IA91株は取り込んだMPを細胞壁以外の細胞成分(例えば、細胞膜を構成する脂肪酸)やエネルギー源としても活用するだけでなく、その過程で産出する副産物(乳酸)をも無駄なく利用していることが明らかになりました。


酸素呼吸に比べると、無酸素下(嫌気的な環境下)での発酵は、ごくわずかにしかエネルギーを獲得できない代謝様式です。地下圏のようなエネルギー源も乏しく酸素も利用できない環境に生息するバクテリア(つまりIA91株)にとって、上記のエネルギー節約術は、実環境下での生存に非常に有効であると考えられます。大規模ゲノム情報に基づいて進化系統的な解析を進めると、IA91株の持つMP拝借戦略は、この菌が属するMarine Group Aの共通祖先も有していた性質である可能性が示唆されます。Marine Group Aの進化の過程で、無酸素かつエネルギー源に乏しい環境に生息するグループは細胞壁の合成を他のバクテリアに依存してきた一方で、酸素呼吸能を獲得して有酸素環境に生息域を広げたグループは自身で細胞壁を合成する道を歩んできたと推察されます(図2)。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202405291477-O3-IVTawjy9


今後の予定

今回、地下圏に生息する新門バクテリアIA91株の培養に成功したことで明らかとなった事実は、地下圏などのエネルギー源が極度に乏しい過酷な環境でさえ、微生物は巧妙かつ大胆な省エネ戦略で生命を維持し生き抜いている、という知られざる姿です。同時に、この発見は地下の天然ガス資源の形成に及ぼす微生物活動の理解につながります。さらに、今回得られた知見をもとに、他のバクテリアが放出する細胞成分を活用した未知微生物の培養化手法を確立することで、環境中の未知・未利用・未活用微生物資源の開拓にも大きく貢献することが期待されます。

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