フンで見つける魚の病気
共同通信PRワイヤー / 2024年6月17日 22時0分
以上のように、感染区のアユのフンには酢酸、グルコース、コルチゾール、冷水病菌、日和見菌、シピオンケラなど、魚病との関連が推定されるさまざまなバイオマーカーが含まれていることを発見することができました。さらに腸内マイクロバイオームの変動についても調べたところ、感染した魚の腸内では、感染防御に重要と考えられている二次代謝産物の生成遺伝子を多数持つロドコッカス(Rhodococcus)などの微生物の存在量が減少する様子もメタゲノム情報から捉えることに成功しました。このことから、冷水病感染をきっかけとして、アユの腸内マイクロバイオームのバランスが変化する「ディスバイオシス」が起きていることが示唆されました。
本研究により、魚そのものを犠牲にしなくても、毎日回収できる水槽中のフンによって定期的な健康モニタリングができ、かつ個体の調査ではわからなかった水槽全体の平均的な健康状態を知ることができる可能性が示されました。フンに含まれる酢酸やコルチゾールは冷水病以外の魚病の指標にもなる可能性があります。将来的にはフンを用いることで、水産養殖現場におけるさまざまな異常の早期発見や定期的な健康診断につながると期待されます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406132127-O2-gk47WnJD】
今後の予定
今後、実験室規模での基盤的な研究として、今回特定した酢酸やグルコース量といったバイオマーカーの変動が発生するメカニズムの解明を進めます。さらに、実規模養殖施設での実証的な研究として、養殖場で感染が発生した際にこれらのバイオマーカーに変動が見られるかどうかをモニタリングすることで、より実用化に適したマーカーを選定します。将来的には養殖現場でのフンモニタリング技術の実用化と、他の魚病におけるフンモニタリング技術の適用可能性を検証することにより、本技術を次世代の持続可能な水産養殖に貢献する健康管理技術へと高めることを目指します(図2)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406132127-O3-vc0WVTpj】
論文情報
掲載誌:mSphere
論文タイトル:Fecal metagenomic and metabolomic analyses reveal non-invasive biomarkers of Flavobacterium psychrophilum infection in ayu (Plecoglossus altivelis)
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