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Y染色体の退化・消失で性は失われてしまうのか!? 多様な動植物の性染色体研究から性の存続機構をひも解く!

共同通信PRワイヤー / 2024年7月11日 14時0分

 その結果、性染色体サイクルの各段階に位置する性染色体は必ずしも進化の袋小路に入り込んでいるわけではないことが明らかになり、サイクルのどの段階においても性染色体の入れ替わりが生じる可能性を示すことができました(図2)。このことは、性染色体サイクル仮説が進化の袋小路仮説に代わる普遍的な性の存続機構であることを示唆します。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202407023066-O2-79RB6785


5.研究の意義と波及効果

 本総説は、性染色体進化に関する従来の知見から最新の知見までを体系的にまとめており、性染色体の多様性と性染色体サイクルについての現状を理解することに役立ちます。しかし、我々が理解する性染色体サイクルは、まだまだ限られた生物種の情報に基づいており、依然として完全な理解には程遠いものです。そのため、本総説では、性染色体進化における未解明な点や課題も提示しました。今後これらの課題に取り組み、特に実験的に性染色体サイクルを駆動させることで、「性染色体サイクル」が支える性の存続機構の解明につながることが期待されます。


6.論文情報

<タイトル>

Sex chromosome cycle as a mechanism of stable sex determination

<著者名>

Shun Hayashi, Takuya Abe, Takeshi Igawa, Yukako Katsura, Yusuke Kazama, Masafumi Nozawa

<雑誌名>

The Journal of Biochemistry

<DOI>

10.1093/jb/mvae045


7. 補足説明

[注1] 性染色体

常染色体上に性決定遺伝子が現れることで生まれた染色体のこと。哺乳類などではXとYの2種類の性染色体が存在し、X染色体を2本持つとメス、X染色体とY染色体を1本ずつ持つとオスになる。鳥類や鱗翅目昆虫などではZとWという2種類の性染色体が存在し、Z染色体を2本持つとオス、Z染色体とW染色体を1本ずつ持つとメスになる。


[注2] 性染色体の退化

性染色体が進化の過程で遺伝子を失っていく現象。転移因子と呼ばれる繰り返し配列の蓄積も退化の特徴のひとつである。Y染色体やW染色体に特に顕著な現象である。


[注3] 性決定遺伝子

オスあるいはメスを決定する遺伝子。ヒトではオス化を司る性決定遺伝子SryがY染色体上に存在し、未分化の生殖巣を精巣形成に導く。性決定カスケードの最上位に位置する遺伝子である。

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