若い超新星残骸SN1006で「磁場増幅」の証拠を発見
共同通信PRワイヤー / 2024年7月24日 18時0分
(3)研究の波及効果 ― 宇宙線加速の謎解明へ
超新星残骸における磁場増幅は、宇宙線加速の観点からも極めて重要な問題です。今回の発見で超新星残骸SN1006のシェルには、磁場が100倍以上に増幅された領域が混在し、それが電波スペクトルの「折れ曲がり」と同時に「細いシェル」を説明することが分かりました。一方で、磁場強度が違うにも関わらず、電波とX線で観測されるシェル構造が似通っているのは何故でしょうか?また、他の若い超新星残骸RXJ1713.7-3946やカシオペアAで観測されたホットスポットの点滅は、SN1006では見えないのでしょうか?ここではその原因を考察します。
まず、電波とX線の画像が似ていることは、磁場が100倍以上も増幅された領域がシェルに沿って、ほぼ一様に広がっていることを示唆します。これらは衝撃波面に沿ってパッチ(ホットスポット)のように点在している可能性もありますし、極めて薄いシート状に広がっているのかもしれません。シンクロトロン放射の強度は磁場の2乗に比例するため、大まかに磁場増幅された領域の体積を見積もることができます。
SN1006の場合、シェル全体の10万分の1程度しかないはずです。このような小さな(あるいは薄い)領域は、チャンドラ衛星の解像度をもってしても画像で分解することができません。また、仮に分解できたとしても、【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202407244052-O18-3Mf716cP】 で折れ曲がった第1成分が、果たしてX線まで伸びているかも定かではありません。もちろん、今後の観測で、RXJ1713.7-3946やカシオペアA で観測された時間変動が見られれば、より強い制限を与えられることになります。
最後に、図4で求めた電波とX線の画像から、さまざまな位置で電波とX線のシェルの厚みを比較したプロットを図6に示します。全てのシェル領域で、磁場の増幅が見られ、増幅率は100-300倍程度であることが分かります。超新星残骸のプロトタイプともいえるSN1006で磁場増幅の確かな証拠が得られたことで、宇宙線加速の長年の謎であった「超新星残骸ではPeVまで加速できない?」問題に、重要かつ新たな示唆が得られたことになります。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202407244052-O26-B02tY1cG】
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