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イネコムギはイネのミトコンドリアを持つ新たなコムギであった!

共同通信PRワイヤー / 2024年8月7日 14時0分

・ミトコンドリアは乾燥、低温、病原菌感染などの環境変化、ストレスを察知するセンサーとして機能して

    おり、イネコムギはコムギが有していない新奇形質を獲得している可能性が高い。


3.研究の背景

 三大穀物5であるコムギ、イネ、トウモロコシは世界の穀物生産の約9割を占めていますが、その理由として、これら作物の農業上の遺伝的特性が他の植物に比べて特に秀でていることが挙げられます。一方で、これら3種の作物はすべてイネ科植物ですが、異なる亜科に属していることから交配による交雑が非常に困難であり、それらがもつ優れた遺伝資源を相互に利用することは出来ませんでした。さらに、近年の気候変動や人口増加に目を向けると、乾燥・高温化によりコムギの輸出大国であったオーストラリアがコムギ輸入国に転じ、また、中進国・発展途上国などでは人口増・食生活変化によって穀物需要が著しく増加しており、人類の食料生産はこれまでにない危機に直面しているといっても過言ではありません。それゆえ、各々の優れた遺伝資源を相互利用するために、コムギ、イネ、トウモロコシなどの間の交雑不全を乗り越え、新たな交雑植物を作出する技術の確立が求められていました。

 私達のグループでは、近年、顕微授精法を用いることによりコムギ−イネ間の交雑不全を克服し、イネの遺伝資源を保持する可能性が高いコムギ雑種(イネコムギ、oryzaWheat)の作出に成功しました(参考:https://www.tmu.ac.jp/news/topics/31308.html、および、 https://www.youtube.com/watch?v=DuEwYC6p-KI)。今回はこのイネコムギのゲノム組成を、各種ゲノム解析およびFISH解析6などにより明らかにしました。


4.研究の詳細

  「イネ卵細胞、コムギ卵細胞、コムギ精細胞」および「イネ卵細胞、イネ精細胞、コムギ卵細胞、コムギ精細胞」を融合させた交雑受精卵を発生、・再分化させることで、7系統のイネコムギ植物体を作出しました(図1A)。これらの植物体から調製したゲノムDNAの塩基配列決定(ゲノム解析)を行った後、イネおよびコムギのゲノム配列情報を参照してイネコムギのゲノム配列の組成を調べたところ、解析した7系統のイネコムギのうちの6系統において、コムギの核・細胞質ゲノム配列に加えて、イネミトコンドリアのゲノム配列が保持されていることが示されました(図2中のミトコンドリアゲノム、および核ゲノム:コムギ個体)。さらに、残りの1系統では、イネの核ゲノム配列がコムギのゲノム配列の中に一部残ったイネコムギも確認することが出来ました(図2中の核ゲノム:キメラ個体)。しかし、このイネコムギがキメラであったため次世代へのイネ核ゲノムの伝達は確認できませんでした。また、イネコムギのF2世代個体から調製したゲノムDNAの詳細なゲノム配列の組成を解析することよって、イネミトコンドリアDNAに由来するDNA領域がコムギミトコンドリアゲノム内に挿入されていることが示されました。さらに、イネとコムギのミトコンドリア特異的なFISHプローブを作成し、イネコムギ細胞に対してFISH解析を行ったところ、イネミトコンドリア、コムギミトコンドリア、および融合ミトコンドリアが細胞内に観察されました(図3)。加えて、イネコムギがもつイネミトコンドリアゲノムの子世代(F2世代)および孫世代(F3世代)への伝達をゲノムPCR7により確認したところ、多くのイネミトコンドリア領域が安定的に世代を超えて伝達されていることも確認されました(図4)。 

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