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アルカリ性の水に溶けたCO2をエネルギー物質に転換 ー炭素循環を実現する炭酸ガス回収・利用技術として期待ー

共同通信PRワイヤー / 2024年9月2日 14時0分

 これに対する新しいアプローチとして、アルカリ性の水溶液で捕捉したCO2を直接利用して資源化を行うReactive CO2 Capture(RCC)[8]技術が提案されています。酸性のCO2はアルカリ性の水酸化カリウム水溶液に容易に溶けます。この水に溶解した炭酸水素イオンを直接的に電解反応に用いることができれば、CO2の分離・回収工程に要するエネルギーを大幅に削減できます。炭酸水素カリウム(KHCO3)水溶液を原料として供給する電解反応装置では、高分子電解質膜の近傍で炭酸水素イオンがプロトンと中和反応(HCO3− + H+ → CO2 + H2O)することによって、反応装置の内部でCO2の気泡が発生します。発生したCO2は電極触媒による活性化が可能であり、ギ酸への還元反応(CO2 + 2H+ + 2e− → HCOOH)を進行させることができます。しかしながら、これまでの水溶液供給型の電解反応装置では、ギ酸を生成するためのファラデー効率が最大でも約60%にとどまっていました。これは、内部発生したCO2の還元反応に競合して、水素発生反応(2H+ + 2e− → H2)が起こってしまうことが原因でした。ギ酸への転換反応のファラデー効率を向上させるには水素の発生を抑制する必要があります。しかし、原料となる炭酸水素イオン自体が水素発生反応を誘発するプロトン供与体となる可能性も指摘されており、困難と考える意見もありました。したがって、炭酸水素塩水溶液を供給する電解反応装置において、ギ酸などの還元生成物を選択に合成するための戦略は明らかになっていませんでした。


4.研究の詳細

 東京都立大学の研究グループでは、CO2還元反応用の電極(カソード)近傍におけるプロトン濃度を低減するとともに、内部で発生したCO2の分圧を増大させることによって、ギ酸合成の選択性を向上できるのではないかと考えました。この作業仮説を実証するため、プロトンを輸送する高分子電解質膜とCO2還元用カソードを、親水性の多孔質膜で隔てた構造の電解反応装置を開発しました(図1)。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202408295590-O3-ObTJzq3R

 

図1 炭酸水素イオン水溶液からギ酸イオンを合成するための電解反応装置


水を分解して酸素を発生するための電極(アノード)には酸化イリジウム触媒を、CO2をギ酸に還元するためのカソードにはビスマス触媒を用いました。高分子電解質膜にはプロトン交換膜を使用し、アノードで生成したプロトンをカソードに輸送させます。このプロトン交換膜とカソードとの間に親水性の多孔質膜を設置し、ここにカソード側から濃度3.0 mol L−1のKHCO3水溶液を供給しました。アノードから高分子電解質膜を経由して供給されるプロトンが、親水性の多孔質膜の内部で炭酸水素イオンによって中和されてプロトン濃度が低減し、それと同時にCO2ガスの発生反応が促進され、生成したCO2は微細な気泡としてビスマス触媒上に移動すると考えられます。親水性の多孔質膜としてセルロース混合エステルを用いたところ、電流密度100 mA cm−2においてギ酸生成のファラデー効率が91%に達することがわかりました(図2)。このファラデー効率は、KHCO3水溶液を原料とするギ酸イオンの電解合成のなかでの世界最高性能です。また、反応を駆動させるための全セル電圧は3.1 Vであり、既報と比べて低く、電解反応が高効率で進行していることがわかりました。電極触媒反応場の合理的な設計によって、水溶液を原料とした場合であっても効率よくギ酸イオンが生成したことから、触媒の固体表面に電解液及び内部発生したCO2ガスが近接した三相界面が形成されていることが示唆されました。

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