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細胞内の生体分子間のコミュニケーションの仕組みの解明 GRB2とSOS1の役割を分子レベルで明らかに

共同通信PRワイヤー / 2024年9月13日 14時0分

・この異なる結合親和性が、分子間の架橋をうながし、これが液液相分離(LLPS)の形成につながる可能性を示唆。

・NMRと新規データ解析法を用いることで、GRB2全長のこれまで知られていなかった物理特性を解明。


3 研究の背景

 私たちの体は、外部からの様々な情報に反応して、その状況に応じた適切な行動を取ることで正常に機能しています。例えば、ホルモンや成長因子などの内分泌物質が、体外や体内からのメッセージであるシグナルとして特定の細胞に届くことで、細胞はそれに反応して、分裂や成長、修復などのプロセスを進めます。このような外部からのシグナルを受け取り、それを細胞内部でDNAまで正確に伝える過程が「細胞内シグナル伝達」です。

 このシグナル伝達の上流過程で、GRB2やSOS1というタンパク質が中心的な役割を果たします。GRB2は細胞膜にある受容体からシグナルを受け取り、それをSOS1に伝えます。SOS1はそのシグナルをRASという分子に伝え、最終的に細胞核に存在するDNAにまで情報を伝達します(図1)。これにより、細胞はその情報に応じた反応を引き起こすのです。しかし、これまでの研究では、GRB2とSOS1がどのようにタンパク質間の相互作用を起こし、外部からのシグナルがDNAにどのように伝わるのか、その詳細は十分に理解されていませんでした。また、近年、GRB2とSOS1は液液相分離という現象を起こすことで、シグナル伝達の制御をより精密に行っている可能性が示唆されています。しかし、GRB2とSOS1のような分子がどのようにして集合と離散を起こし、巨視的な液滴の形成と消失を起こしているかについては、分子・原子レベルでほとんど明らかになっていませんでした。研究が進んでいなかった理由の1つには、GRB2とSOS1は、通常のタンパク質よりも柔らかな領域を広く持つために、構造生物学研究で最も多く採用されている、X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡といった解析法の適応が難しかったことも挙げられます。このGRB2とSOS1のタンパク質間相互作用の理解が進むことで、病気の原因解明や新しい治療法の開発が期待されています。今回の研究は、この未解明のプロセスを分子レベルで解明し、細胞内シグナル伝達の全体像をより明らかにすることを目指しています。


4 研究の詳細

 この研究では、GRB2とSOS1のタンパク質間相互作用を核磁気共鳴スペクトル法(NMR)という化学物質の分析に用いられる手法を応用して詳細に調べました。NMRは、GRB2やSOS1のような運動性が大きく柔らかな領域を持つタンパク質においても、これらの分子の構造や運動性の大きさと速度を解析できます。また、本研究では、NMRデータから分子間の結合の強さを、最も可能性のある結合モデルを選択して、値を推定する新しい計算手法の開発にも成功しました。

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