細胞内の生体分子間のコミュニケーションの仕組みの解明 GRB2とSOS1の役割を分子レベルで明らかに
共同通信PRワイヤー / 2024年9月13日 14時0分
この新規計算手法とNMR計測を組み合わせて、GRB2のSOS1への相互作用の様式や強さを詳細に解析しました(図2A)。GRB2は、ドメインと呼ばれる機能部位が3つ(NSH3、SH2、CSH3)つながった構成をしています。これまでの研究から、2つのSH3ドメイン(NSH3とCSH3)がSOS1との相互作用に関わることは知られており、この2つはSOS1に対してほぼ同一に関与すると考えられていました。しかし、今回の解析により、NSH3のSOS1への結合親和性はCSH3と比較して10〜20倍も強いことが明らかになったことから、SH3ドメインが異なる役割を持つことが示唆されました。また、この2つのSH3ドメインの運動性も大きく異なっていることが分かり、ここからSOS1との相互作用の様式もドメイン間でかなり異なることが分かりました。この発見は、細胞内でのGRB2とSOS1によるシグナル伝達機構が、これまでの理解よりもはるかに複雑で、シグナルの強さや種類に大きく影響を与える可能性があることを示唆しています。
特に、近年、GRB2とSOS1が液液相分離を引き起こすことで、細胞内シグナル伝達を微調整している可能性が示唆されています。そこで、GRB2とSOS1の複雑な相互作用様式と液液相分離との関係にも注目しました(図2B)。本研究の結果から推測されるGRB2とSOS1の相互作用モデル(LLPS形成機構モデル)は次の通りです。(1)GRB2が単独で存在する際は、GRB2のCSH3ドメインは大きく揺らいでいます。2つのSH3ドメインがSOS1の結合領域と相互作用すると、CSH3ドメインの位置が大きく変化し、GRB2の2量体化が促進されます。(2)GRB2の2つのSH3ドメインのSOS1への結合親和性は10〜20倍異なるため、SOS1の1分子が持つ複数の結合部位に対して結合ステップが異なり、結果的にGRB2が複数のSOS1を架橋する構造を取ります。これにより複数の分子が一か所に集合し、全体として液液相分離を引き起こすと考えられます。
今回の研究成果は、細胞が外部からの信号をどのようにして受け取り、その情報を効率的にDNAに伝えるかという基本的なメカニズムを理解する上で、重要な一歩を提供するものです
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202409126357-O2-6v4i83s1】
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