1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

外部磁場を必要としない新型超伝導磁束量子ビットを世界で初めて実現

共同通信PRワイヤー / 2024年10月15日 14時0分

 一方、磁束量子ビットは、図1(a)のようにジョセフソン接合を三つ使用するため非調和性が高く、周波数衝突の問題を緩和できます。しかし、磁束量子ビットは、(量子ビットのコヒーレンス時間が最長となる)最適動作のために、外部コイルで超伝導ループに磁束量子(Φ0 = 2.07×10^-15 Wb)の半分の磁束を与える必要があります。これは、外部コイル由来の低周波ノイズの要因になり、各々の量子ビットに磁場印加用コントロールラインが必要なため、大規模集積化の課題となっていました。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410117989-O1-LiS3b0vW

(a) 従来型磁束量子ビットは、三つのジョセフソン接合(JJ、×、黒色)を含む超伝導ループで構成され、基底状態|0>と励起状態|1>の重ね合わせ状態で最適動作させるためには、外部磁場の印加が必要である。

(b) 一方、π接合(π-JJ、*、赤色)を用いた新型磁束量子ビットでは、外部磁場なしで自発的に最適動作点に達する。

 

その解決策として、東北大学の山下太郎教授(研究当時: 名古屋大学大学院工学研究科 准教授)らが提案したπ接合を磁束量子ビットに組み込む方法があります(図1(b)参照)。π接合は、強磁性体を組み込んだジョセフソン接合であり、外部から磁場を印加せずに180度(π)の位相差を生じるため、自発的に最適動作点にバイアスすることが可能になります。これにより、外部ノイズを抑え、回路が簡素化され、量子ビットの集積化が容易になることが期待されています。


表1 代表的な超伝導量子ビットの特性

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410117989-O2-3ENNKgSO


今回の成果

 今回、我々はシリコン基板上に結晶成長させた窒化ニオブを用いた窒化物超伝導量子ビットの技術(2021年9月20日NICT報道発表)と、π接合の技術(2017年11月15日NICT報道発表)を組み合わせ、π接合を持つ磁束量子ビットを作製し、世界で初めてゼロ磁場で最適動作することを実証し、そのコヒーレンス時間の測定に成功しました。

 これまでの研究では、カールスルーエ工科大学(ドイツ)のUstinov教授研究チームのFeofanovらがNb/AlOx/Nbジョセフソン接合とNb/CuNi/Nbπ接合により構成された位相量子ビットにおいて4ナノ秒のコヒーレンス時間を報告しているほか、同チームのShcherbakovaらが磁束量子ビットへのπ接合導入を試みましたが、量子ビット動作は確認されず、コヒーレンス時間の測定には至りませんでした。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください