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外部磁場を必要としない新型超伝導磁束量子ビットを世界で初めて実現

共同通信PRワイヤー / 2024年10月15日 14時0分

 我々は、CuNiよりも安定したπ状態を維持できるPdNiを採用し、NbN電極上にπ接合を形成しました。さらに、NICTが開発したNbN/AlN/NbNジョセフソン接合とNTTが開発した3次元共振器用の磁束量子ビットの最適デザインを組み合わせ、ゼロ磁場で最適動作する新型超伝導磁束量子ビットを作製しました(図2参照)。NTTの長寿命量子ビット測定系を用いた測定の結果、ゼロ磁場が最適動作点であることを確認し、1.45マイクロ秒のコヒーレンス時間を観測しました(図3参照)。これは、従来のπ接合を組み込んだ位相量子ビットと比べて360倍のコヒーレンス時間の改善となります。一方で、π接合を持たない従来の磁束量子ビットでは16マイクロ秒のエネルギー緩和時間が得られており(2021年9月20日NICT報道発表を参照)、現状のNbN/PdNi/NbN積層構造によるπ接合はコヒーレンス時間の改善という課題があることも世界で初めて明らかにしました。

 今回の成果は、外部磁場が不要で、マイクロ秒オーダーのコヒーレンス時間を持つ磁束量子ビットを世界で初めて実現したもので、量子ビットを含む様々な量子回路の微細化・集積化に重要な技術であり、外部磁場が不要になることで、回路の簡素化や省エネ、コスト削減に貢献するものです。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410117989-O3-F69o2Tcb

(b) 全窒化物超伝導体で構成されたジョセフソン接合の構造

(c) 窒化ニオブ(NbN)ベース電極上に形成されたπ接合の構造


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410117989-O4-BR8ykP6S

図3 (a) 新型超伝導磁束量子ビットの基底状態から励起状態への遷移周波数の磁場依存性を表すマイクロ波分光スペクトラム。 矢印は遷移周波数の最低点でもある磁束量子ビットの最適動作点を表す。従来の磁束量子ビットは最適動作点が0.5Φ0で現れるが、新型超伝導磁束量子ビットはゼロ磁場(0Φ0)で現れるのが特徴である。

(b) エネルギー緩和時間T1=1.45 μsを示すコヒーレンス時間の測定結果

 


今後の展望

 今後、コヒーレンス時間の更なる延伸、将来的な大規模集積化を見据えた素子特性の均一性の向上を目指して、回路構造や作製プロセスの最適化に取り組み、従来のアルミニウムベース量子ビットの性能を凌駕する量子ハードウェアの新しいプラットフォームの構築を目指します。π接合の材料、構造を改良することで、より長いコヒーレンス時間を持ちながらゼロ磁場で動作可能なπ接合磁束量子ビットを開発することができれば、量子コンピュータチップを含む様々な量子において必須の構成要素となる可能性があります。

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