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タンデム型太陽電池のトップセルとして有望な光吸収層を開発

共同通信PRワイヤー / 2024年11月13日 14時0分


安価で高性能なタンデム型太陽電池の実現を可能にする材料やデバイスの研究開発は、世界中で行われています。最近ではペロブスカイト型化合物の研究開発が盛んです。他方、CIS型化合物も有望であり、薄膜の特長を生かした、軽量で柔軟性のある太陽電池の作製も可能にする材料として以前から注目されています。約1.1 eV程度の、比較的禁制帯幅が狭いCIS型太陽電池はすでに製品化もされています。しかし、トップセルとして用いることが可能な、禁制帯幅約1.6 eV以上(短波長の光吸収に特化)のCIS型太陽電池で高い光電変換効率を得るのは難しく、これを実現するための技術開発が求められていました。


研究の経緯

産総研は、広禁制帯幅CIS型太陽電池の研究開発において、安価で高性能なタンデム型太陽電池の実現を可能にするトップセルや、水分解水素生成のための高性能光カソード応用を目指しています。1.7 eVの広禁制帯幅を有するCIS型材料であるCuGaSe2薄膜およびデバイスの高性能化技術の開発に取り組んできました(2014年1月20日 産総研プレス発表2022年8月2日 産総研プレス発表)。これまで、希少金属インジウム(In)を含まない広禁制帯幅CuGaSe2薄膜太陽電池の高性能化は困難な課題でした。その標準条件(エアマス1.5、光強度1000 W m-2、25 ℃)下における光電変換効率として10%を超える報告例は数例のみで、12%を超える効率に至っては皆無でした。


今回、太陽電池の光吸収層であるCuGaSe2薄膜にアルミニウム(Al)を添加し、裏面電界効果を得ることで性能向上を実現しました。これにより、インジウムを含まない広禁制帯幅のCIS型薄膜太陽電池として、初めて12%を超える光電変換効率を達成しました。


なお、本研究開発は、独立行政法人 日本学術振興会 科学研究費助成事業(23K04899)、および一部は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業「クリーンエネルギー分野における革新的技術の国際共同研究開発事業/CO2大幅削減に資する革新的部材開発/CIS系タンデム太陽電池要素技術の国際共同研究開発」(2021~2024年度)による支援を受けています。


研究の内容

1.7 eVの広禁制帯幅を有するCIS型化合物(CuGaSe2)薄膜に裏面電界効果を持たせるためのアルミニウム添加手法を考案し、インジウムを含まないCuGaSe2薄膜太陽電池の高性能化技術の開発に至りました。アルミニウム添加によって禁制帯幅の拡大が期待できる反面、性能低下を招く結晶欠陥が増加するため、高性能な太陽電池を作製することはこれまで困難でした。今回、CuGaSe2光吸収層の製膜中に、アルミニウムを光吸収層の表面から裏面方向に向かって含有量が多くなる傾斜をつけて添加しました。さらにアルカリ金属化合物も添加することで、欠陥形成を抑制できる効果を見いだしました。これらの手法を製膜工程に取り入れることで、広禁制帯幅CuGaSe2薄膜太陽電池の性能向上を実現しました。また、CIS型太陽電池は安定性に優れることが知られており、今回作製した太陽電池は未封止の状態で数カ月放置した後も性能低下は見られず、CIS型太陽電池の優れた特長を維持していることも確認できています。

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