エポキシ樹脂のケミカルリサイクルに新たな道筋
共同通信PRワイヤー / 2024年11月18日 14時0分
現在、容器包装や自動車や家電などは、リサイクル法のもとマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが実施されています。しかし、これらに多く使われているエポキシ樹脂やその複合材料はリサイクルが難しいことが知られています。熱可塑性樹脂と違い、一旦硬化したエポキシ樹脂は難溶性のため新たな原料とは混ざり合わずマテリアルリサイクルはできません。従来、エポキシ樹脂のケミカルリサイクルは酸や塩基などを用いた方法が知られていますが、原料回収の収率がエポキシ樹脂の構造に依存するものが多く、高収率でモノマーやビスフェノール類分子などの有用な有機化合物に分解することは困難でした。ケミカルリサイクルが簡便に実施できるようになれば、上述した用途で使われるエポキシ樹脂の原料を回収するばかりでなく、さまざまな機器の材料の再生利用も期待されます。また、エポキシ樹脂系の接着剤を分解できると、強固に接着された部材を回収する易解体技術への展開が期待できます。
最近になり、遷移金属触媒または特定の塩基を用いるエポキシ樹脂の化学分解法が報告され、ビスフェノール類分子を収率良く回収できるようになりました。しかしながらこれらの方法は、ビスフェノール類に由来するエーテル化合物の副生などビスフェノール類分子以外の生成物も得られること、1日以上の反応時間を要すること、約200 ℃といった使用する溶媒の沸点を超えた高温が要求されるなどの理由から耐圧性を備えた容器が必要となること、硬化剤の種類が限定されることなど、技術ごとの個別課題がありました。このため、多様なエポキシ樹脂に対して広く簡便に適用でき、短時間で主原料のビスフェノール類分子を選択的に回収可能な化学分解技術が望まれてきました。
研究の経緯
本研究チームは、あらゆる炭素資源の循環利用および高付加価値化を目指して研究を進めています。そのなかで、高安定樹脂として知られるスーパーエンジニアリングプラスチックの化学分解法を実証してきました(2023年1月24日、2023年8月17日産総研プレス発表)。この化学分解法は、適切な分解反応剤を選定することによって約150 ℃という穏和な条件下で実施できます。今回、この成果がエポキシ樹脂のケミカルリサイクルにも利用でき、前述の課題を解決できると考えました。こうして、多様なエポキシ樹脂から重要な化学合成原料であるビスフェノール類を回収できる新たな化学分解法を開発しました。
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