小さな刺激が選択の悩みを解消
共同通信PRワイヤー / 2024年11月18日 11時0分
本研究成果はSpringer Nature社が出版する『Scientific Reports』(論文名:Somatosensory stimulation on the wrist enhances the subsequent hand-choice by biasing toward the stimulated hand)にて、2024年9月30日(月)にオンラインで掲載されました。
■今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
私たちは手首にある正中神経と尺骨神経への極短時間の電気刺激が、刺激側の手に関する脳部位の神経活動に変化を生じさせることに着目しました。実験参加者は、パソコン画面の様々な場所に出現する1つの黒い丸(ターゲット)に、左右一方の手をすばやく選択して到達させる(リーチ)課題を行いました。ターゲットが提示される直前(0~600ミリ秒前)に、片方の手首から極短時間(85ミリ秒)の電気刺激を行いました。刺激の強さは筋肉の収縮を生じさせず、刺激感覚のみ生じさせる強さとしました(電気刺激装置)。この電気刺激が、図1の「右手と左手を半々の確率で使うライン(選択均衡線)」と反応時間(ターゲットが提示されてから手を選択してリーチを開始するまでの時間)に、変化を及ぼすかを調べました。
結果は、刺激しない条件および両手首に刺激する条件と比較して、片方の手首への刺激によって、選択均衡線が反対側にずれ、刺激側の手の選択エリアが広がりました。さらに、過去の研究で、反応時間は手の選択に関する難易度を表す指標として使われ、反応時間が短いほど、手の選択が容易であることを示します。本研究では、片手刺激条件で、反応時間が著しく短くなったことから、手の選択のプロセスを促進する効果が認められました。これらの結果より、ターゲットが出現する直前の手首への電気刺激が、刺激側の手の選択を促すことが明らかになりました。
■研究の波及効果や社会的影響
本研究では、ターゲット提示前に片方の手首に極短時間の電気刺激を行うことで、刺激側の手の選択を増加させることを明らかにしました。この結果は脳卒中によって片側の体が麻痺した当事者に対して、麻痺した手を使うことを促す治療として応用できる可能性があります。リハビリテーションの現場では、麻痺した手を再び動くように治療しますが、ある程度動くようになっても、麻痺した手は、麻痺していない健康な手と比べると使いにくくなるため、健康な手で全てのことをやってしまい、麻痺した手を使用しなくなってしまうことがあります。生活の中で麻痺した手を使用しないと、せっかく回復した手の動きが悪くなり、さらに使用しなくなってしまうのです。そのため、リハビリテーションにおいて、手の使用を促す治療はとても重要となります。刺激によって、無意識的に麻痺した手を使用することを促すというアイデアは、新しいリハビリテーションのコンセプトを提案するものでもあります。
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