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湿度変化で発電できる「湿度変動電池」の性能がアップ

共同通信PRワイヤー / 2025年1月22日 14時0分


下線部は【用語解説】参照


※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。

正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250122/pr20250122.html )をご覧ください。


開発の社会的背景

インフラ保全や農業などの分野では、IoT技術やセンサーを使ったモニタリングによるスマート化に期待が寄せられていますが、現場に設置するセンサーの電源の確保が課題でした。乾電池などは定期的に交換が必要であり、太陽電池は暗所に向きません。その点、湿度変動電池は昼夜の湿度変化を利用して発電を行うため、あまり場所を選ばず発電が可能で、小型のワイヤレスセンサーなどの電源として活用が期待されています。


研究の経緯

産総研は、潮解性の無機塩水溶液の吸湿作用と塩分濃度差発電の技術を組み合わせることで、湿度変化によって発電を行うデバイスの開発を行ってきました(2021年6月2日 産総研プレス発表)。


これまで開発した湿度変動電池では、内部に用いているポリマー系陽イオン交換膜の水分透過性に起因する自己放電によって、湿度変化から得られた多くのエネルギーが無駄になっていました。そのため、発電で得られる電力も小さく、電子回路の駆動は困難でした。そこで、水分を透過させないセラミック固体電解質膜を利用して自己放電を完全になくすことで、高出力な湿度変動電池を開発しました。


また、湿度変化を利用した発電の熱力学理論はこれまで確立されておらず、特定の湿度変化を与えた際、湿度変動電池から取り出し可能な最大エネルギーや理論上の最大発電効率は不明でした。今回の研究では、湿度変動電池の出力の向上に加えて、理論の導出とその実証を行いました。


なお、本研究開発は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)のNEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050事業「湿度変動発電素子の研究開発」(2019~2023年度)による支援を受けています。


研究の内容

全固体電池などで用いられるリチウムイオン伝導性セラミック固体電解質膜を用いて、湿度変動電池の性能を大幅に向上させました。湿度変動電池は、空気の湿度変化を利用して発電を行う発電素子です。大気に開放された部屋(開放槽)と密閉された部屋(閉鎖槽)に強い吸湿性を持つ電解液(塩化リチウム水溶液)と電極が収納されており、開放槽と閉鎖槽の間は陽イオン交換膜で仕切られています。周囲の湿度が変化すると、開放槽内の電解液から水が蒸発、または電解液が空気中の水蒸気を吸収して濃度が変化します。閉鎖槽は密閉されているため湿度変化による電解液の濃度変化は起こらず、開放槽と閉鎖槽の間で濃度差が発生して電極間に電圧が発生します。これまでは陽イオン交換膜としてポリマー系の膜を用いていました。ポリマー系陽イオン交換膜は陽イオンに加えて水分も透過させるため、湿度変化によって電池内部に電解液の濃度差が発生しても、浸透圧によって水分が移動し、濃度差を減少させていました。湿度変動電池の電圧は濃度差によって発生するため、濃度差の減少は電圧の減少につながります。放電させなくても電圧が減少するので、この現象は自己放電と呼ばれます。従来の湿度変動電池では、自己放電によって多くのエネルギーが無駄になっていることがこれまでの研究でわかっていました。

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