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湿度変化で発電できる「湿度変動電池」の性能がアップ

共同通信PRワイヤー / 2025年1月22日 14時0分


今回の研究の特徴は、従来のポリマー系陽イオン交換膜に代わって、水分を全く透過させないリチウムイオン伝導性セラミック固体電解質膜を用いたことです。これにより、自己放電がなくなり、従来よりも高出力の発電が可能となります。図1に開発した湿度変動電池の構造と写真を示します。大きさはW35×D35×H5 mmで、内部の隔膜として厚さ20 µmのガラスセラミック電解質膜(株式会社オハラ製 LICGC™ SP-01)を用いています。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501173009-O2-aCVhb7EP


図2(a)は、実験環境において湿度90%で完全に放電させた後、湿度を30%に下げた際の湿度変動電池の最大出力を測定した結果です。最大出力は2.5 mWであり、膜の面積あたりの出力密度は436 µW cm−2でした。これは、従来のポリマー系陽イオン交換膜を用いた場合に得られていた出力密度(6.4 µW cm−2)の68倍に相当し、大幅な出力向上を実現しました。図2(b)は、この湿度変動電池を屋外に設置して出力を継続的に計測した結果です。昼夜の湿度変化により、3カ月以上の発電が可能であることが確認され、期間中の最大出力は348 µW(60.4 µW cm−2)、平均出力は17.5 µW(3.0 µW cm−2)でした。この平均出力は、ワイヤレスセンサーなどの省電力な電子回路を駆動させることが可能な値です。今回開発した湿度変動電池は、実環境でも十分な発電性能を有しています。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501173009-O3-s690k068


湿度変動電池による電子回路の駆動を実証するため、湿度変動電池を電源とするワイヤレスセンサーを開発しました(図3(a))。このワイヤレスセンサーは、二つの湿度変動電池で生じた電圧をDC-DCコンバーターによって昇圧して、小型のリチウムイオン電池(容量0.8 mAh)に蓄電します。リチウムイオン電池に蓄電された電気を使って、気温、湿度、気圧を計測するセンサーと無線通信用の集積回路を10分間隔で動作させ、センサーの計測データとリチウムイオン電池の電圧のデータを無線送信します。蓄電用のリチウムイオン電池を搭載しているため、湿度変動電池が発電していない時間帯にも継続して動作が可能です。このワイヤレスセンサーを屋外に設置して実証実験を行いました(図3(b))。この実証実験では、4カ月以上にわたってワイヤレスセンサーのデータを送信し続けることができました(図3(c))。実験開始当初は約2.5 Vだったリチウムイオン電池の電圧は、10日程度で満充電(2.8 V)まで増加し、その後も2カ月間にわたり満充電に近い電圧を維持できました。その後は徐々にリチウムイオン電池の電圧が低下していますが、これは湿度変動電池の劣化による発電量の低下に起因していると推測されます。湿度変動電池が全く発電していない状態でワイヤレスセンサーを動かすと、リチウムイオン電池の電圧は2.8 Vから2.0 Vまで約25日間で低下します。そのため、満充電を維持できなくなってからも湿度変動電池の発電で電力が供給され、リチウムイオン電池の電圧低下が遅くなったことで長期間の駆動が実現できたと考えられます。湿度変化を利用した発電で4カ月以上も電子回路を駆動させた例はこれまで報告されておらず、今回の実証実験が世界初となります。

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