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沿岸域でのポリヒドロキシ酪酸(PHB)生分解のカギは微生物叢の多様性

共同通信PRワイヤー / 2025年1月28日 14時0分


なお、本研究開発は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業/海洋生分解性に係る評価手法の確立(課題番号:P20008)」による支援を受けています。


研究の内容

今回の研究では、生分解性プラスチックの生分解性評価に用いられる標準試験法のBOD試験において、試験期間の短縮を図るために生分解を担う微生物叢を詳細に解析しました。まず、日本沿岸の15カ所から海水を採取し、微生物が作り出す生分解性プラスチックのうち最も研究が進んでいるPHBを添加して、実験室でBOD試験を実施しました。その結果、PHBの生分解率は9.1%から94.4%と海水によって大きなばらつきがあることがわかりました。次に、各海水に含まれる微生物の量を定量PCR法により評価するとともに、16S rRNA遺伝子アンプリコン解析により微生物の種類と存在量比のデータを取得して微生物叢の多様性指数を算出しました。その結果、微生物量が多いほど生分解率が高くなることが確認されました。さらに、このような量的な指標に加え、微生物叢を質的に評価する多様性指数においても数値が高いほど生分解率が高くなる傾向にあることが明らかとなりました(図1)。このことは、後述する進化的に異なる多様な微生物がPHB分解に寄与しているという遺伝子解析の結果を支持しており、海水に含まれる微生物種の多様性が高いほどPHBの生分解にとって有利であることが示唆されました。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501243324-O2-1Wxvj8RC


次に、複雑な微生物叢の中でPHBを分解することができる微生物を特定するため、15カ所のうち微生物量と多様性指数値が比較的高い海水を用いてBOD試験を実施し、微生物叢の組成と遺伝子発現の変化を時系列的に解析しました。その後、ショットガンメタゲノム解析によりBOD試験培養物で優占する102種の微生物由来ドラフトゲノムを取得しました。ドラフトゲノムからこれまでに分離培養されたPHB分解菌が有するPHB分解酵素のアミノ酸配列に対して相同性が高い遺伝子を抽出したところ、38種のドラフトゲノムから57個のPHB分解酵素遺伝子が見いだされました。これらの遺伝子の多くは、今まで知られていたPHB分解菌が有しているPHB分解酵素とは分子系統学的に異なっていたため、沿岸域には新しいPHB分解菌が多数生息していることが示唆されました(図2a)。さらに、微生物叢の遺伝子発現パターンをメタトランスクリプトーム解析により調査したところ、BOD試験の時間経過に伴い発現するPHB分解酵素の種類が変化していくことが示されました(図2b)。

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