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社説:人口減と移民 「外国人1割社会」へ議論を

京都新聞 / 2024年4月1日 16時0分

 少子高齢化が急進する日本で、外国人の存在感が格段に増している。共に暮らし支え合う仲間として、基盤となる制度と政策を考える時ではないか。

 人口の減少は成長期を過ぎた「成熟国」共通の課題だ。結婚・出産が個人の自由である以上、少子化対策の効果は限られる。欧米では移民政策を柱として労働力を補い、社会活力を高めている。だが、日本では「外国人材」と言い換え、場当たり的に受け入れを広げてきた。

 少子化が顕著になった2000年、小渕恵三首相の諮問機関が「多くの外国人が日本に暮らし、働きたいと思える移民政策をつくることが必要」と指摘。08年の福田康夫政権下でも自民党議員連盟が「人材開国 日本型移民政策」を提言した。

 だが10年以降、中国や韓国との領土問題で国民感情が悪化し、自民党「保守派」を中心とした移民反対論が勢いづく。

 一方で経済界からは「安価な労働力」として外国人労働者の拡大を求める声が高まった。

 12年以降の第2次安倍晋三政権は「国際貢献」を名目とした技能実習制度を順次広げた。19年には新たな在留資格「特定技能」を創設し、家族帯同や永住に道を開いた。

 実質的な移民解禁だが、安倍氏は保守層を意識して「移民政策ではない」と強弁したため、環境整備など正面からの議論はタブー化されたままといえる。

 今や日本で働く外国人労働者は205万人に上る。10年前の3倍に近い。ベトナム、中国、フィリピンをはじめ国籍も多様化し、永住者らを含めた在留外国人は約322万人に及ぶ。

 国立社会保障・人口問題研究所が昨年公表した将来人口推計によれば、40年余り後の2067年には総人口が今より3割も減り、8900万人台になる一方、外国人が1割に達するとした。これにより少子化の影響が一定緩和されると見込む。

 だが、専門家から「楽観的な仮定で、人口減の危機を薄めたのでは」という批判も上がる。外国人が日本を選ぶのかとの疑念があるからだ。

 積年の大規模金融緩和で円安が進み、日本で稼ぐ利点は大きく損なわれている。近隣の台湾や韓国が移民の生活環境や待遇を改善する中、国際労働市場で存在感の低下は否めない。

 政府は、劣悪な労働環境を指摘されて久しい技能実習を廃止し、「育成就労」とする法改正案を今国会に提出した。原則認めなかった職場変更(転籍)を緩和するが、看板の掛け替えにとどまる懸念も拭えない。

 継ぎはぎのような小手先の見直しは限界だろう。どんな「外国人1割社会」を描くのか。将来像を軸に、社会保障や子どもの教育環境など包括的な政策を議論すべきだ。人材ではなく、同じ人間として共生するための基本法制定も視野に入れたい。

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