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「子は親が苦悩する姿をまた見る」DVや虐待継続の恐れも 共同親権のリスク、当事者の声聞いて

京都新聞 / 2024年4月12日 6時0分

法案を読み、不安を募らせる女性。元夫のDVが原因で離婚した(京都府内)

 離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」の導入を盛り込んだ民法改正案が、12日にも衆院法務委員会で採決される。父母どちらかの単独親権のみと定めた現行規定を77年ぶりに改める。政府は「子の利益」を確保するためと位置付けるが、離婚後もドメスティックバイオレンス(DV)や虐待が継続しかねないという懸念が当事者たちから出ている。元夫のDVが原因で離婚した女性は、異例のスピードで進む国会審議を注視し、不安を募らせる。

 夫と子ども2人を乗せて車を運転している時だった。「時速100キロ出せ」「追い越せ」「おまえは何もできない」-。怒鳴り続ける夫の声が遠くなり、一瞬、気を失った。車はガードレールをこすりながら前進。後部座席の夫が慌ててブレーキをかけ、ようやく止まった。

 意識が戻り、助手席の子どもを見ると、恐怖のあまり目を見開いたまま固まっていた。けがはなかったが、車は大破。夫は「こんな事故を起こして、おまえのせいで人生が台無しだ」となじり続けた。

 DVが原因で離婚した京都府内に住む40代の女性は、当時を思い出すと今も涙が出てくる。

 婚姻中、夫は「ポン酢が切れていた」「子どもが雑誌を汚した」などのささいな理由で激高した。物を壊し、「リポート」の提出を要求した。クローゼットの扉はへこみ、ストーブや人形のベビーカー、スマートフォンは破壊された。子どもの予防接種や保育所の入所は、夫の反対でできなかった。渡される生活費は少なく、独身時代の貯金を取り崩した。「俺を怒らせるおまえが悪い」と責められ、夫の顔色をうかがう毎日だった。

 交通事故をきっかけに、妹に相談した。DVを指摘され、子連れで実家に戻った。自身と長子はDVによる適応障害と診断された。離婚調停を申し立てたがまとまらず、2年かかって家裁の判決で離婚が成立。DVの慰謝料も認められた。

 元夫は子どもとの面会交流を何度も申し立てた。自身と子を守るための別居を、調停委員に「子の『連れ去り』だ」と非難された。面会が母子の生活の安定を損なうという診断書はあったが、離婚から2年後に面会交流の実施が決定。

 当時幼児だった長子は「今は優しい顔をしていても、昔のことを覚えているから怖い」と言い、思春期に入ると面会を拒否した。小学生の次子は今も面会を続けている。

 法案ではDVや虐待の恐れがあれば単独親権と規定するが「追い詰められた状態では証拠を残すのは難しく、認められないかもしれない」。DVの立証が難しい中では、子連れ別居を諦めざるを得ない人がいっそう増えるのではないかと心配する。

 共同親権への変更は離婚後も申し立てられる。父母が折り合わなくても、家裁が決定すれば、進学や子の病気の長期的治療、子を伴う引っ越しなどで元夫の同意が必要になる。父母の意見が対立して期限に間に合わないなど「急迫の事情」がある場合や、「日常の行為」は単独で判断できるとされるが、「DVがあった関係性に引き戻される」と懸念する。「話し合いができないから離婚したのに、共同親権になれば、子どもは親が苦悩する姿をまた見なければいけなくなる。どういうリスクがあるのか、当事者の声をちゃんと聞いて、法案に反映させてほしい」と訴える。

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