社説:国民スポーツ大会 意義や在り方を見直す時だ
京都新聞 / 2024年4月20日 16時0分
時代に合わせて大会の意義と成果を検証し、これまでの延長線上ではない改革を求めたい。
都道府県の持ち回りで毎年開かれる国民スポーツ大会(旧国民体育大会)について、全国知事会長の村井嘉浩・宮城県知事が「廃止も一つの考え方」と問題提起した。
他の知事からも、運営に見直しが必要とする声が相次いで上がっている。
来年に開催地となる滋賀県の三日月大造知事は「在り方について検討することは重要」と述べ、京都府の西脇隆俊知事も「今までと同じやり方でやるかは議論すべき」との見解を示した。
今年から大会は国スポに名称が変わり、10年後の2034年に開かれる沖縄県で全都道府県を2巡する。いったん立ち止まり、白紙から今後の在り方を考えるべき時だ。
知事の間に共通する課題認識は、開催地の施設整備や受け入れ準備、毎年の選手団派遣など、費用や人員の確保の重い負担である。
滋賀では陸上競技場や体育館、プールを新設し、全体の事業費は600億円近くに上る。県と市町は国スポの担当部署を設けて職員を割り当てている。
開催自治体の過度な負担は以前から指摘されてきた。大会を共催する日本スポーツ協会は03年、運営の簡素化や効率化を盛りこんだ国体改革プランをまとめ、夏季・秋季大会の一本化や参加者総数の削減などを進めてきた。
それでも浮上した抜本的な見直しを求める訴えは、現状の枠組みのままでは持続できないという見通しの表れにほかならない。
1946年、京都を中心に第1回国体が開かれた。戦後の復興や高度成長の時代は、開催で体育施設や道路の整備が進む意義があった。幅広いスポーツの普及や競技力の底上げにも貢献した。初期の目的は十分に達成したといえるのではないか。
しかし、予想以上の速さで人口が減少する中、巨費を投じて全国大会を府県単位で持ち回りするのは、明らかに地方の「身の丈」に合わない。
開催地が有力選手を集めて優勝する慣例からも長く抜け出せず、都道府県対抗の意味も薄れている。
盛山正仁文部科学相は「持続可能な大会となるよう検討を進めたい」としている。日本スポーツ協会は新たな検討部会を発足させ、24年度中に見直し方針を決めるという。
知事会も近くアンケート結果をまとめる。各知事からは隔年や複数府県でのブロック開催などの案が出ている。
国民へのスポーツの普及や地域振興といった本来の意義に立ち戻り、思い切った改革の実行が必要だ。
自治体側は意見や要望を伝えるだけでなく、主体的に国と協議する姿勢が欠かせない。
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