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「ツバメはどうやって巣をつくる」身近な疑問を生徒と解き明かす、研究者出身の教諭の思いとは

京都新聞 / 2024年4月23日 7時0分

ツバメの巣を手に「身近な生き物からも見事な工夫が発見できる」と話す中野教諭(亀岡市横町・亀岡高)

 中野あゆみさん(51)=京都府亀岡市=は、学科長を務める亀岡高探究文理科の授業や自然科学部の部活動で生徒たちとツバメの謎解明に取り組んでいる。条件を変えた人工巣を作って、壁との接着強度を上げるのに田んぼの土に混ぜるわらが重要だと突き止めた。その成果を出発点に、巣にわらを用いない種類のツバメに疑問の目を向け、唾液の役割を見いだした。

 「みんな知っていて身近なのに、分かっていないことが多い。実際に目にすることで不思議に思えることがあるし、歩いて行ってデータも取れる」。高校の周囲でたくさん巣を見つけられるツバメを探究のテーマに据えた狙いを明かす。

 生徒たちが毎年研究を積み上げ、今春で6年目を迎える。その実践が評価され、2月に東レ理科教育賞の佳作に選ばれた。府立高教員の入賞は2006年以来で3人目だ。

 ただ、熟練の理科教員という訳ではない。奈良女子大大学院で水生昆虫を研究し、野生生物の調査研究を行う公益財団法人に就職。関東に移り、公共工事や企業の環境対策が生態系に与える影響を数値化して評価する仕事をしていた。

 2012年、保育所に空きがあった縁で亀岡市に転居した。「水道水のおいしさと、子どもたちが大好きな魚捕りが近くの川で楽しめる」のが気に入り、自宅を構えた。

 財団の取り組みで小中学生や親子向けに自然観察会や講演会をするうちに、人と関わる仕事にやりがいを感じた。高い専門性がある民間人らを募る府教育委員会の「スペシャリスト特別選考」に合格し、17年春から教壇に立つ。

 生徒への指導で大切にしているのは、学校の外に出て行くことだ。分からないことがあれば大学や企業の専門家に問い合わせるように促し、学校関係者以外から質問や意見をもらえる研究発表会やコンテストにも参加するように背中を押す。

 「つながる勇気を持てば、誰かが助けてくれる。自ら考えを深める探究を含めて、そうした経験は社会に出てからも生きていく力になる」。こうした信念は、教員になるまで長かった社会人経験に裏打ちされている。

 フィールドは教育現場に移っても、根底にあるのは自然への愛着だ。「生徒たちの視野は世界レベルの課題に向きやすいが、まずは足元にある自然をしっかり知ってほしい。豊かな自然が残る亀岡にいるのにもったいない」。言葉に実感がこもる。

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