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社説:水道の耐震化 備えは急務、整備の加速を

京都新聞 / 2024年5月7日 16時0分

 当たり前のように身近にある水道を、いつまで安心して使い続けられるだろうか。

 水道管の耐震化や老朽管の更新が進んでいない。4月に上水道行政の所管は厚生労働省から国土交通省へ移った。この機に、基幹インフラを守る打開策を講じてほしい。

 日本では大きな地震が起きるたび、水道管が破損し、断水被害が繰り返される。能登半島地震発生から4カ月たった今も石川県の数千世帯で断水が続く。

 原因の一つに、水道管の耐震化の遅れが指摘されている。ひとたび破壊されると、復旧に多大な労力と日数がかかる。後回しのツケは余りに大きい。

 問題の深刻さは石川県だけではない。京都府が先月発表した花折断層地震の被害想定は、府内人口の約半数の130万人が断水に遭い、大半の地域で復旧に1カ月以上かかると見込む。

 厚労省によると、基幹的な水道管のうち、その場所で想定される最大規模の地震に耐えられる割合を示す「耐震適合率」の全国平均は2022年度末で42.3%にとどまる。

 政府は28年度までに60%に引き上げる目標を掲げている。しかし、1年間で1.1ポイントしか上がっていない。

 京都府では21年度末比0.6ポイント増の41.1%、滋賀県は同0.8ポイント増の32.7%にとどまる。京都市も39%と低い水準だ。

 いずれも、現在のペースでは水道インフラに重大な被災リスクを抱えたままだ。

 水道施設の耐震化計画さえ策定していない水道事業者も府内には多く、27事業者のうち9に上る。技術職員不足が要因といい、小規模事業者には広域連携強化が欠かせない。

 日本の水道管の多くは高度成長期に整備され、経年劣化が激しい。法定耐用年数の40年を超えた水道管は府内で27.5%。更新率は年1%に満たず、老朽化は進む。全て取り換えるには100年以上かかる見通しだ。

 背景には、厳しい財政事情がある。水道事業は原則、独立採算制で運営されるが、人口減や節水技術向上で水需要は減り続けている。収支が悪化しても、料金値上げは住民の負担増となるため、二の足を踏む水道事業者は少なくない。国の交付金を頼りたくとも、水道料金が全国平均以上などの要件がある。

 国はより柔軟で現状に即した財政支援を打ち出すべきだ。

 自治体など水道事業者の側も一層の工夫が求められる。

 他府県では、災害時の避難所や病院につながる管路の改修を優先したり、マンホール内に水道管から直接取水できる蛇口を付けて臨時給水所を設置できるようにする事例もある。

 人口減が進む中、既存施設の更新だけでなく、小規模分散型の給水方法や、雨水や井戸の活用など、多角的に「命の水」を守っていく手だてを考えたい。

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