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珍石、奇石、江戸時代の「石愛好家」を追う男性 石にこだわる理由は、自身の研究にあった

京都新聞 / 2024年5月11日 9時0分

江戸時代の石愛好家の収集品を会場に並べ「美意識や風流を感じてほしい」と話す岡村喜明さん(草津市・琵琶湖博物館ギャラリー)

 滋賀県内から三重県にかけて分布する古琵琶湖の地層でゾウやワニなどの足跡の化石を発見し、全国でも足跡化石の分野で成果を挙げてきたアマチュア研究者。岡村喜明(おかむら・よしあき)さん(85)がいま取り組んでいるのは、江戸時代の北山田村(滋賀県草津市北山田町)にすみ、珍石や奇石を愛好した木内石亭(きのうちせきてい)(1724~1808年)の失われた収集品の追跡調査だ。

 今年が石亭の生誕300年であることを機に、これまでのフィールド調査から一転、文献調査に着手した。

 「石の長者」ともいわれる石亭は11歳の時から奇石を愛し、30年をかけ2千品余りの石を集めたと著書「雲根志」で記す。だがそのリストは作成されておらず、1896(明治29)年の琵琶湖水害で流失した。生前、交流があった仲間や弟子たちに石を譲ったり交換した記録があり、これまでに数百点が推定できたという。

 「現在のような通信や移動の手段もなかった時代に、信頼や友情で貴重な石を譲ったり交換したところがすごい」と感じ入る。石亭が交流していたのは3百人。遠方の人とも手紙を通じて交換や譲渡の依頼に応じていた。

 飛騨高山(岐阜県高山市)の人物に譲ったとされる石を調べに、現地の博物館を訪れたところ、収蔵庫で「江州鏡山 黒六方石」と札がついた5センチほどの煙水晶を確認。野洲市と竜王町にまたがる鏡山で取れた石で、実物を見たとき「涙が出そうだった」と話す。このほど中間報告をまとめ琵琶湖博物館(草津市)で発表したが、さらに調査を重ね、本の出版につなげようと構想中だ。

 同館ギャラリーでは自身も参加する「湖国もぐらの会」が「大地に夢を掘る」展を6月2日まで開催中だ。会場では、江戸時代の石部にいた収集家、服部未石亭(みせきてい)の子孫、服部桊三さんとともに、石亭ら江戸時代の石愛好家についてのコーナーを展開。牧亭と名乗った人物の収集品を当時の木箱ごと陳列している。絵や和歌で飾られた箱の中は色とりどりの布が敷かれ美術品のよう。「日本人の美意識や風流といったものが詰まっている」。

 現代では地学や古生物学、考古学、薬学などの専門に分類される鉱物や化石だが、石亭ら江戸時代の愛好家たちはそれらをまとめて不思議がり、愛でた。「当時の愛好家の石たちに対する気持ちを感じてほしい」。自身も少年時代から化石採集に目覚めた「現代の弟子」として、先人に敬意を込める。栗東市在住。

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