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『ミンキーモモ』最終回の悲劇から40年 「打ち切り」騒動後も無理難題が突きつけられる

マグミクス / 2023年1月27日 6時10分

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■新たな魔女っ子シリーズの金字塔となった『ミンキーモモ』

 本日1月27日は、1983年に『魔法のプリンセス ミンキーモモ』第46話「夢のフェナリナーサ」が放映された日です。放送から40年の時が経ちます。この第46話は本作の第1部最終回で、当時の視聴者に大きな衝撃を与えたエピソードでした。

 本作は女児向けに作られた、「魔女っ子もの」と呼ばれるジャンルのTVアニメ作品です。人びとが夢を失ったことで、夢と魔法の国「フェナリナーサ」は地球から離れてしまいました。フェナリナーサを呼び戻すため、プリンセスであるミンキーモモが、人びとに夢を思い出させるため奔走するという物語でした。

 この際、モモは大人になる魔法で18歳の姿に変身します。その変身シーンを当時の流行だった新体操を思わせるダンスでバンクシーンにしたのが、それまでの魔女っ子ものになかった発想です。以降の魔女っ子もので「変身バンク」は定番となり、現代の「プリキュア」シリーズにまで受け継がれる伝統的な手法となりました。

 また、「変身して大人になる」というパターンも以降の魔女っ子ものに受け継がれたもので、それまではあまりクローズアップされてこなかった要素です。これは本作のテーマが「夢」で、メインターゲットとなる女児層に合わせたものでした。大人になって夢をかなえたいというのは、当時の子供たちにとって一番身近な想いだったと思います。

 しかし、その大人も満足させるクオリティの高い内容と作画レベルから、本作は本来のターゲットでなかったアニメファンにも高評価を得る作品となりました。

 その一端が、総監督の湯山邦彦さん、原案・構成の首藤剛志さんというコンビにあります。後にTVアニメ『ポケットモンスター』を立ち上げたふたりと言えば、納得される方も多いことでしょう。この湯山さんと首藤さんのふたりが、単なる子供向け作品を超えた『ミンキーモモ』の物語を生み出しました。

 さらに当時の女性声優として高い人気を誇っていた小山茉美さんが、主人公であるミンキーモモを演じ、主題歌を担当していたことが高い年齢層にもアピールできた要因です。そのため、アニメ雑誌での扱いも当初から大きなもので、全年齢層が楽しめる作品となりました。

 その一方、本来の目的である女児層の人気は、可もなく不可もないという平均点だったようです。スポンサーのポピーで販売する関連オモチャの売り上げも、それほど高いものではありませんでした。そのため、番組は本来の予定である1年(52話)を前に42話で打ち切りになることが決まります。

 しかし、これにアニメスタッフが猛反発しました。そこで広告代理店である読売広告社がなかに入る形で46話まで製作するということになり、第43話から最終回に向けた伏線を入れ込んだストーリーとなります。そして、後世に残ると言われた衝撃の第46話「夢のフェナリナーサ」へと続くことになりました。

※以下には『魔法のプリンセス ミンキーモモ』の結末に関する詳しい記述があります。閲覧する場合はご注意下さい。

■果たして衝撃の展開は是か? 非か?

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 筆者が本放送で第46話を見た時の衝撃は大きなものでした。それは魔女っ子ものというジャンル的に想像もできないシーンがあったからです。

 前回までの展開で魔法が使えなくなったモモ。いわば魔法少女でなく普通の女の子になったわけです。そして、これまでの展開のように冒険することもなく普通の生活を送るモモに訪れたのは、交通事故による死でした。

 このシーンを見た時の筆者は、最初は夢オチだろうとタカをくくっていましたが、一向にそんな気配もなく、死を決定づける場面が続いて物語は最後を迎えます。実はこの時、すでに本作の新シリーズの開始が告知されていました。それゆえに筆者の頭は疑問符で埋め尽くされていました。

 物語としては、モモは死んだ後にも魂と思われる存在は残り、魔法の国の両親でなく、地球にいるかりそめのパパとママの本当の子供として生まれ変わるという流れになっていました。そして、いずれモモが大人になった時、フェナリナーサが下りてくるというモモの夢で第46話は幕を閉じます。

 ところが、この46話製作進行中に、またしてもスポンサーから無理難題が伝えられました。別番組で予定されていたオモチャを加えて、番組を延長するようにというオーダーです。こういった二転三転の事態があり、一度は最終回を迎えるはずだった『ミンキーモモ』は急きょ、第2部をスタートさせることになりました。

 死んだはずのモモがコスチュームを変え、何事もなくふたたび物語は進行していきます。その謎が解けるのは第2部の最終回となる第63話。実は第2部は、すべて第1部で赤ん坊になったモモの見た夢だったのです。そして、人びとから夢を奪おうとしていた悪夢がモモを苦しめていたのでした。この悪夢との戦いが第2部のメインストーリーというわけです。

 この悪夢との戦いでモモを助けることになったのが、それまで「カジラ」としか話せなかったワニのような竜の子供「カジラ」。実はこのカジラこそスポンサーがねじ込んだオモチャでした。最初は首藤さんも扱いに困ってギャグ要員として置いていたそうです。

 ところが首藤さんは、最終回を迎える前に劇的な発想を思いつきました。それは、カジラこそ「モモの死を知った人びとの悲しみの涙の化身」だったのです。このスポンサーの無理難題も見事に物語に落とし込む才覚、素晴らしいのひと言に尽きるでしょう。

 こうして『ミンキーモモ』の2度目の最終回は大団円に終わります。しかし、やはり実質的な最終回は第46話だったのかもしれません。

 余談ですが後年、首藤さんは打ち切りがなかった場合の最終回について語ったことがあります。それは悪夢との戦いでモモが傷ついて千年の眠りにつくのですが、その夢の中でフェナリナーサが下りてくるというものでした。

 結果的に実際の放映と大きく違うのはモモが赤ん坊に転生するか、深い眠りにつくかくらいだったということです。しかし、ショッキングな主人公の死という展開ゆえに、語り継がれるような作品になったことは、ある意味では良かったのかもしれません。「転生もの」が増えた昨今では、深い眠りにつくより赤ん坊として生まれ変わった方がソフトだと考えられるからです。

(加々美利治)

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