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シャアにも繋がる「美形悪役」! 実写化も話題『ボルテスV』がハイティーン層に支持されたワケ

マグミクス / 2023年1月26日 6時10分

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■悲劇的な運命を背負ったイケメン異星人

 最近、フィリピンでの実写化発表でにわかに話題になっている『超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)』は、1977年6月~翌年3月にテレビ朝日系で放送されたスーパーロボットアニメ番組です。

 1977年といえば、その年に生まれた方が既に40代半ば。お父さんやお母さんが子供のときに見ていた時代の作品ですが、それが今また実写という形で、それも海外が自主的に作るというのですから驚きです。

『ボルテス』の制作は「東映」。ただし現在『ワンピース』などを作っている「東映アニメーション」とは別の「東映本社」のもので、実際の制作現場は「日本サンライズ(後の株式会社サンライズ)」でした。

 当時のサンライズはまだ独立したてで、同じ年の秋に、初めて完全自社オリジナル作品の『無敵超人ザンボット3』が放送されるという時期だったので、下請けとしてのアニメ制作もまだまだ手掛けていました。たとえば、月はズレますが、TBS系で放送された『ろぼっ子ビートン』などが、ほぼ同時期に「東北新社」から請け負う形で制作された作品です。

『ボルテス』は、同じく制作は東映本社、現場はサンライズだった『超電磁ロボ コン・バトラーV(ブイ)』の後番組で、スポンサーや企画、制作スタッフもほぼ同じ、主役ロボットも『コン・バトラー』同様の五機合体というものでしたが、敵宇宙人側には旧態然とした身分制度があったり、敵味方に血縁関係があったりするなど、ドラマ性がかなり強い作品でした。

 特に、このドラマ性の強さは、監督であった故・長浜忠夫さんの作品に対する姿勢から生まれたものです。

 80年におしくも急逝された長浜監督は、舞台演劇から人形劇の演出を経てアニメの世界に入り、舞台劇で培ったドラマラスな作品演出を活かし、伝説的な野球アニメ『巨人の星』の監督、後には『ベルサイユのばら』でも監督を務めました。

 75年に、やはりサンライズの前身であった「創映社」「サンライズスタジオ」(どちらも、後の日本サンライズとイコールではありません)が東北新社版権で制作していた『勇者ライディーン』の監督を27話から引き継ぎます。そこで、低年齢男児ターゲットだった『ライディーン』に、ハイティーンの女子ファンが多数いることを知った長浜監督は、特にその人気の原動力のひとつであった「カッコいい敵役」に注目。

 企画段階から制作に加わった『コン・バトラー』にもその要素を加えることで確信を得ると、『ボルテス』に「プリンス・ハイネル」という、悲劇的な運命を背負った超イケメンの敵異星人を、もうひとりの主人公として登場させます。

 この試みは成功し、やがて『ガンダム』の敵方キャラであるシャアやガルマなどにもつながる「人気美形悪役」というキャラクターの存在を確固たるものにする大きな布石となったのです。

 また、長浜監督は「アニメは子供が見るもの」という社会通念が強かったこの時代にも、ハイティーン以上で行動力に満ちたファン層がいることを知り、作品に感想を寄せたり、スタジオを訪ねてくるファンやファンクラブ活動などにも積極的に応えました。

 たとえば、ちょうど、77年に、とあるファンクラブが自力で開いた1000人規模の上映イベント(当時は現在のようなプロによるアニメイベントはまだ存在せず、高校生や大学生のファン自らが企画運営していました)の日が、たまたま『ボルテス』の第1話の放送日に重なったことがありました。

 すると長浜監督は、自分のポケットマネーでこの第1話のフィルム(デジタル化以前は、TVアニメのほとんどは16mmフィルムでした)を「自分用」として別個現像して購入。なんとイベント会場で、本放送と同時刻に上映するという太っ腹なサービスまでしたのです。

 それだけ長浜監督は『ボルテス』に思い入れを持っていたのでしょうし、対応を受けたファンのなかからは、後のアニメ界を支える次世代スタッフも多数生まれています。

 ただ、こうした長浜監督の手厚い対応は、ときとして、社会常識に未熟なファンの行動を助長させることもあり、制作現場内部からの批判が出たこともありました。

 しかし、他の大人が相手にしなかった「ファン」という存在の重要性にいち早く気づき、作品のオーディエンスという「居場所」を与えてくれたのが長浜監督だとも言えるでしょう。

 そんな長浜監督が、自信作であった『ボルテス』の実写化を天国で耳にしたらなんというでしょうか。もちろん諸手を上げて喜んでいるでしょうし、熱血漢の九州男児だった彼は、「監督は私がやる!」と、誇らしげに身を乗り出しているのではないかと思うのです。

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。

※本文の一部を修正しました。(2023.1.27 10:30)

(風間洋(河原よしえ))

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