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人気がありすぎて終焉? 仮面ライダーV3「ゾル・死神・地獄・ブラック」素顔の敵幹部が減少した理由とは

マグミクス / 2023年8月18日 7時10分

人気がありすぎて終焉? 仮面ライダーV3「ゾル・死神・地獄・ブラック」素顔の敵幹部が減少した理由とは

■第3クール突入で提出されたいくつかの強化案

 本日8月18日は、1973年に『仮面ライダーV3』第27話「生きかえったゾル・死神・地獄・ブラック」が放送された日です。特撮番組史上あまり例のない前番組の敵幹部集結で、今なお話題になることの多いエピソードでした。

 この敵幹部集結は当時の児童雑誌トップを飾る一大イベントで、その集合写真はインパクト絶大。後の書籍でもよく見かける定番の写真となりました。この敵幹部集結はどういった経緯で行われたのでしょうか?

 話数を見ると一目瞭然ですが、このイベントは3クール突入の時期、つまり新規クールの強化案のひとつでした。『V3』はクールごとにさまざまな強化案を投入したことでも知られています。

 2クール突入時には2話連続スタイルと26の秘密の廃止、そして新幹部ドクトルGの投入がありました。このうちひとつ目は当初、前後編にすることでV3のピンチを描いた後に26の秘密による逆転劇での盛り上がりを想定していたそうです。

 ところが、当時の子供たちはこれを「V3が弱いからだ」。……と思ったそうです。そこで1話完結を基本とし、話を複雑化させる26の秘密の解明も棚上げとなりました。この時、同じく話を複雑にさせる風見志郎と珠純子のストーリーの掘り下げも終結させました。

 そして、新幹部ドクトルGという強敵を登場させて戦いを盛り上げる方向にシフトします。それまでの幹部と違って前線でV3と戦うドクトルGは、その強さが強調されました。このドクトルGと互角に戦うV3も強いという方向性で、善悪双方の強さを引き立てたということです。

 こういった路線変更で2クールは盛り上がり、作品人気を決定づけました。そこで3クールとなるわけですが、ここでの強化案にはキー局である毎日放送が大きく関わってきます。毎日放送が要求したのが前番組『仮面ライダー』の登場人物の再登場でした。

 最初に白羽の矢が立ったのが滝和也。当初のアイデアのなかには単に再登場するだけでなく、仮面ライダー1号と2号によって毎週少しずつ改造されて最後には仮面ライダー4号になるというものもあったそうです。

 このアイデアが後の「ライダーマン登場」という形へとなりました。相棒という部分はインターポールのデストランハンター、佐久間ケンという形で画面に登場することになります。滝との差別化で二枚目半のキャラに設定しましたが、いつの間にか姿を消すことになりました。

 この他にも企画されていたのが石倉五郎のセミレギュラー化です。演者である三浦康晴さんの中学校進学により前作途中から降板していましたが、毎日放送は絶大の信頼を寄せていました。おそらく出演していれば、前作ではかなわなかった少年ライダー隊の制服に袖を通していたことでしょう。

 この流れからかは不明ですが、人気のあった4大幹部の復活が決定されます。この時期にはドクトルGが怪人となって降板することも決まっていたので、最後の花道という意味もあったのかもしれません。

 このドクトルGの降板劇も使われなかったアイデアがあります。ドクトルGの正体だと思った怪人Aを倒した後、姿を見せるドクトルG。その後、怪人Bが現れるが今度こそドクトルGの正体か? ……という展開です。

 しかし、このアイデアは児童雑誌の特集と相反するということで棄却されました。当時の児童雑誌は、TVでわからないことを特集するのが基本方針みたいなところもありましたので、そういった理由から視聴者が先の展開にハラハラするドラマ作りはむずかしかったのでしょう。

■人気キャラの乱造が逆効果に?

『V3』27話で復活した幹部のひとりである死神博士は、白いスーツに黒いマント姿がトレードマークだった。画像は「仮面ライダー E-CRAPHICS CARD 06死神博士&イカデビル」(バンダイ) (C)石森プロ・東映

 こういった企画案のなかで実際に採用され、3クールの目玉となったのが「部族編」と呼ばれる展開でした。毎月、大幹部と率いる怪人たちが入れ替わるというもので、前述の児童雑誌との関係も大きく影響しています。

 児童雑誌から毎月の目玉となるイベントが欲しいということで考えられたのが、大幹部が次々と襲ってくる展開でした。この毎月の目玉という部分は何も『V3』だけに限らず、他の作品でも求められていたそうです。同時期の人気作品であった『マジンガーZ』も同じように定期的にイベントを提供していました。

 この大幹部の登場が盛り上がると考えられた要因は、その人気にあります。前述したようにドクトルGを強く描いたことで盛り上がったように、当時の子供たちには敵幹部は単なる悪役というよりも、人気キャラとしての面が強くありました。

 素顔をさらして怪人たちを指揮する大幹部は、当時の子供たちにとって恐怖とともに憧れを寄せる存在だったのです。そこにはやはりベテラン俳優による演技力という部分も魅力として加味されていたのでしょう。筆者も今でも大幹部の演技には見惚れてしまう部分が多くあります。

 そういった理由でキバ一族、ツバサ軍団、ヨロイ族といったこれまでにない部族集団の登場が決定しました。この他にもいくつか予定されていたようで、企画案には角族、トゲ族、ヒレ族、ナンタイ族といった記述も見られます。これらは未使用に終わりましたが、先行してデザインされた怪人の一部は終盤にヨロイ族の怪人として使用されました。

 こうして満を持して動いたデストロンの大幹部攻勢でしたが、結果的には思ったほど効果が現れませんでした。短期間で交代する大幹部に、子供たちがあまり魅力を感じなかったからと考えられます。

 個性を出す前に矢継ぎ早に交代するのでは魅力を見せる暇がなかったのでしょう。結果的に大幹部攻勢はヨロイ族を率いるヨロイ元帥で終わりを告げました。もっとも宿敵としてライダーマンが登場したことが続投の大きな理由で、それがなければ第5の大幹部が登場していたかもしれません。

 この失敗が原因かわかりませんが、以降のライダーシリーズではしばらくの間、素顔の大幹部という悪の花形ポジションは少なくなりました。逆に普段は青年の姿で変身して戦うアポロガイスト、巨大な造形物であるキングダークや十面鬼といった個性的な大幹部の登場という、別のパターンで個性的な悪役が登場することになります。

 近年のライダーシリーズを見ると、より個性的な悪役が増えました。もっとも善と悪の境界線があやふやなシリーズが主流となっているので、一概に悪役でカテゴライズできないかもしれません。しかし、往年の特撮ファンには素顔のままで仮面ライダーと互角に戦える大幹部に憧れを今でも抱いていることでしょう。

(加々美利治)

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