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ラスボスは「資本主義の神」 漫画家・武井宏之が語る「シャーマンキング」の新章、『SKY』に込めた意味とは?

マグミクス / 2023年10月17日 18時50分

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■「資本主義=悪」ではなく、そのなかで「どう生きるか」を描きたい

 この2023年で誕生25周年を迎えたバトルファンタジーマンガ『SHAMAN KING(シャーマンキング)』は、最新作となる『SHAMAN KING THE SUPER STAR』が講談社「少年マガジンエッジ」で連載中です。残念ながら「マガジンエッジ」は10月発売の11月号で休刊となりますが、その後は講談社のマンガアプリ「マガポケ」に移籍して連載が継続されること、さらに、同作に続く『SHAMAN KING』の「新章」が準備されていることが明らかになっています。

 『SHAMAN KING』誕生25周年を記念したロングインタビュー企画の3回目となる今回は、作者・武井宏之先生に新章『SKY』について、どこよりも早くそして詳しく語ってもらいました。また『SHAMAN KING』だけにとどまらず、武井先生のもの作り全体についても話が広がっていきます。『SHAMAN KING』編集担当のY田さんも引き続き同席します。

(取材・執筆:タシロハヤト/編集:マグミクス編集部)

『SHAMAN KING THE SUPER STAR』に続いて、「SHAMAN KING」シリーズの「新章」となる『SKY』がスタートすること、シャーマンキング同士の代理戦争「フラワー・オブ・メイズ」はそこで描かれること、そして『SKY』は1話のネームが準備中であることが明かされました。『SKY』にはエンタメをしっかりやりたいという武井先生の思いが強く込められているものの、扱うテーマをどう分かりやすく伝えるかに苦労しているようです。

* * *

――説教くささが出ないように、というのはなかなかハードルが高いですね! 今のところ資本主義を生み出したヤービスがラスボス的存在として描かれていますが、その存在を説明するだけで難しい言葉が出て来ますし、立ち向かうとなると、更にそういう言葉が重なりそうです。

武井 今まで自分のマンガは、なるべく直接表現を避けて、読んでる人が自分で想像して欲しいと思いながら描いてきたんだけど、今回ぱっと読める少年マンガを目指すにあたって、そうなるとどうしても、わかりやすくするために直接言わなきゃいけないところもいっぱい出てくる。

 だから別の言い方とかも考えたりしたけど、『レッドクリムゾン』にしても『マルコス』にしても、ヤービスは現代の資本主義を作ったって言っちゃってるんで、既に出てる表現は変えるわけにいかないんだよね(笑) ただ、気を付けようと思ってるのは、わかりやすさを優先しすぎて「だから」敵なんだとかっていう単純な描き方は絶対しないようにってこと。

――そう伝わってしまうと、「資本主義を100パーセント否定するのではないが、たまにおかしいことあるじゃん?」というテーマからズレてしまいますしね。

武井 うん。最近の『スーパースター』(7月発売「少年マガジンエッジ」8月号ダイ仏ゾーン編第21廻)でも、たまおに「いまの世の中がそんなに悪いと思ってない」って言わせてるし、それが全部駄目ってことになると、花は完全に自給自足しろってことになるし。言いたいのはそこじゃなくって、それ(資本主義)による支配構造とか、そこから生じる勝ち負けっていうのかな……そういうところなのよ。

――そうですね。資本主義イコール「お金」という考えだと、いろいろ矛盾が生まれます。単純に考えても、お金は太古の昔から存在し、私たちはそれを介した市場経済のなかで暮らしています。お金を持っている人が偉いというのもずっとある構造です。先生が言いたいのはそのことを否定するとかではなく、ヤービスがシャーマンキングになったとき、その仕組みに乗って世界を動かそうとする者たちが生まれ、それは世界中の人間を支配することと同じで、まんまとそれは達成されてしまい、いま我々は気付かずに彼らの支配下でもがいている……それをどうにかしたいということですよね?

武井 そうだね、うん。そういうなかで自分がどう生きるかとか、そういうことを伝えようと思ってる。今、ルール自体が変わりつつあることを含めてね。

Y田 ここでいよいよ『SHAMAN KING ZERO』の伏線が回収される……といいのですが(笑)

――おお、確かに! 『ZERO』の2巻ですよね? 「麻葉童子II」のラストでは、現シャーマンキングとなったハオが、ヤービスの作ったその世界をどうするか語ろうとして、語らずに終わっていますね! 今まで延び延びになっていたってことですね。

武井 それは決めてないからだよ! いやウソウソ!(笑)

――大丈夫です(笑)ちゃんと理解してますので!

■新章のタイトル『SKY』の由来とは?

地球すべてのアーカイブであるグレート・スピリッツこそが「クラウド」。そこにアクセスできる能力が、これから先の戦いで描かれていく。『SHAMAN KING THE SUPER STAR』第5巻より (C)武井宏之/講談社

――ところで、なぜ新章のタイトルが『SKY』なのか、聞いても大丈夫でしょうか?

武井 わかる人にはわかるんですが、「花」(フラワーズ)、「星」(スーパースター)と来たら次は「空」(SKY)と昔から決まってて。正確には『SHAMAN KING YARD(シャーマンキング ヤード)』で、略して『SKY』。「ヤード」は「場所」って意味で正しくは「庭」なんだろうけど、もう少し広い意味で使ってる……そんなところです。

――「Y」が「場所」、全部合わせた「SKY」は「空」……。これは両方に意味がありますよねきっと。

武井 「SKY」っていうのは別の次元という意味も持たせていて、今の話のなかだと「クラウド」ですね。

――なるほどクラウド! 確かに「上の方にある別次元の場所」みたいなイメージがありますね。というか「クラウド」という概念が作品に出てきたときは驚きました。自分の中ではデータ管理の最先端というイメージでスピリチュアルな方向とは逆の超現実的な存在だったので、これを持ってくるんだ!? と思ったんですね。

Y田 先生がある日突然、思いついた! って言い始めたんです(笑)

武井 次は王道の少年マンガにしたい、となった時から、新しい要素として「ヘンシン」させたかったんです、キャラに。それでクラウド。戦い方が武器とか霊とかじゃなくて、自分が生身で戦うのがいいっていうのがあって。あとは、そもそものテーマとして大事にしてることで「神様は拝むものじゃなくて自分のなかにある」って言ってるんだけど、そこに気付く、自分が変わることも含めての「ヘンシン」。

――「ヘンシン」……劇中では「ニュートランス」と言っていますね。あの設定にはそういう思いが込められていたんですね。

武井 主人公がいて、後ろに何か強いのがいて、そいつらが戦うっていうと結構難しいのが「主人公がんばってない問題」。いくら精神的に戦ってるって言っても、キャラに対してお前が汗かけとか思ったりして。

 だからニュートランスで本人が一体になって、痛みとかを味わいながら成長して欲しい。あと強いて言うならサイズ比問題かな。X-LAWSの機動天使とか、同じ画面に収めようとすると結構カットが限定されるので、なるべくキャラのサイズを整えたいのはあります。「ヘンシン」なら、サイズの変更も自在なので許される感あるしね(笑)

――『マルコス』においても機動天使は登場しますが、作画のジェット草村先生とはそういう話をしたことはあるんですか?

武井 あります。苦労するのは実際に描く人なので、見せ方をどうするかとか、いろいろ話したりはしました。それ以前に『マルコス』の問題は別のところにたくさんあったしね。

――なるほど……。ではまとめると、「クラウド」を利用した「ヘンシン」である「ニュートランス」は、憑依合体、オーバーソウルに続く概念であると同時に、「フラワー・オブ・メイズ」では必須の能力だと『SUPER STAR』のなかで語られていますが、作劇的な面から言うと、それは生身で戦う描写をするために考えられたもので、バトル中心のマンガを目指す『SKY』ではガンガン熱い戦いが描かれるというわけですね!

武井 そう。なので、花とかその他のキャラがどうやってそこにたどり着いて、どういう感じになるのか、『SUPER STAR』はその辺も楽しみにしていて欲しいかな。

――ありがとうございます。それではこのへんでもう少し話を広げて、携わっている活動全体のことについてお聞きしたいと思います。普段からキャラクターデザインをはじめ多くの依頼が来ていると思いますが、例えば最近のものだと、アニメ『ビックリメン』がありますね。キャラクター作りへの期待が高いからこそ、そういう仕事が来るのは当然として、先生自身もその部分がお好きなんじゃないだろうかと思うんですが、いかがですか?

武井 大好きですよ、やっぱり一番楽しいところはですね、ただキャラクターデザインってよりは、世界観ひっくるめての構成なんですよね。キャラ同士のバランスだったり、役割だったりで世界観を作っていく。だからクレジットでもキャラクター「デザイン」じゃなくて「原案」。線画に起こす作業をしないという意味でもあるけど、ラフを大量に描いて、それを中心にやるからってことですね。

――確かに『ビックリメン』でも、キャラクター「原案」になっています。そういう意味があったんですね!

武井 メカもね。もっとチャレンジしたいので挑戦待ってます!

* * *

『SHAMAN KING』シリーズの新章『SKY』についてその意味や由来など詳しく知るにつれ、武井先生の頭の中にあるイメージが徐々に見えてきました。もっともっと詳しく掘り下げたいところですが、先生の活動は『SHAMAN KING』だけではありません。次回はその他お仕事への取り組みを通じて、武井先生の「ものづくり」全体について深掘りしていきます!

(タシロハヤト)

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